研究課題/領域番号 |
17K08410
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
内藤 隆文 浜松医科大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (80422749)
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研究分担者 |
川上 純一 浜松医科大学, 医学部附属病院, 教授 (50272539)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オピオイド / CYP3A4/5 / 血清バイオマーカー / マイクロRNA / エピジェネティック因子 / 薬物動態 / がん性疼痛 |
研究実績の概要 |
臨床試験については、オキシコドン及びトラマドールを服用するがん患者を中心に患者登録を行った。その結果、オキシコドンでは31名、トラマドールでは30名の患者を登録した。それらのがん患者について、CYP3A4/5の活性マーカーである血漿中4β水酸化コレステロール(4β-OHC)濃度は健常成人と変わらないことが示された(中間解析)。さらにオキシコドン及びトラマドールを服用するがん患者の血漿中4β-OHC濃度は、悪液質の進行度スコアと関連しなかった。血漿中4β-OHC濃度とオキシコドンの血漿中濃度との相関性は認められなかったが、オキシコドンのCYP3A4を介する代謝経路の代謝比とは正の相関関係が認められた。一方、トラマドールの血漿中濃度とCYP3A4を介する代謝経路の代謝比については、血漿中4β-OHC濃度との相関性は認められなかった。 また、エピジェネティック因子であるマイクロRNA(miRNA)の血清中濃度の定量について、リアルタイム定量PCR法を用いた評価法の確立を試みた。対象とする血清miRNAとして、CYP3A4の活性及びがん悪液質との関連性が報告されているmiRNA-27b、miRNA-130b、miRNA-142及び内部標準としてU6 RNAを評価した。予備検討によって、内部標準のU6 RNAががんの病態の影響を受けることが明らかになったため、U6 RNAは内部標準として適さないことを確認した。現在、血清にcel-miRNA-39を添加することで、がん患者で評価を行うことができるmiRNAの定量性を検討している。同時に対象とするmiRNAを増やすために、マイクロアレイ法を用いて血清中miRNAの網羅的解析を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床試験において、予定していた患者登録数に到達し、薬物動態解析、血漿中代謝マーカーの定量、血清中マイクロRNAの定量を開始できたことから、おおむね順調に研究が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
臨床試験の患者登録とともに、薬物動態解析、25水酸化ビタミンDや4β水酸化コレステロールなどのCYP3Aの内因性代謝マーカーや炎症性サイトカインの測定を継続する。さらにエピジェネティック因子の評価については、既にリアルタイム定量PCR法を用いた評価法の確立に目途が立っている。そのため、解析対象とする候補マイクロRNAについて、マイクロアレイ法を用いて、10種類程度の絞り込みを行う。その後にリアルタイム定量PCR法を用いて、候補マイクロRNAの血清中濃度の定量を行う。さらにこれまでの研究活動で既に確立されている薬物代謝酵素、薬物輸送担体およびオピオイド受容体の遺伝子型の評価を実施する。以上の評価項目について、統合的に解析を行い、悪液質の病期ごとの各要因に基づくオピオイドの血中濃度の予測モデルの作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
他財源より、リアルタイム定量PCR法を行うための機器を購入したため、学内での共同機器の使用料が不要となった。研究継続のための消耗品の購入費用が他の研究課題と重複しており、予想していたよりも購入費用が抑えられた。さらに講座内に設置された自動分析装置やマイクロプレートリーダーを使用したことにより、臨床検査項目の外部検査機関への委託費用が不要になったことが挙げられる。 平成31年度の研究費については、主にマイクロアレイ法を行うために必要な外部機関への依頼費用とともに、30年度から開始している血清中マイクロRNAの定量に必要な消耗品にあてる。さらに、25水酸化ビタミンDや炎症性サイトカインなどの血清バイオマーカーの定量、遺伝子解析に関連した消耗品、情報収集のための学会参加に研究費を使用する。
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