研究実績の概要 |
膵癌において生殖細胞レベルのBRCA1/2変異は家族性膵癌の原因遺伝子の一つと知られており、さらにこの変異を有する症例では白金製剤効果が期待されることが観察研究で報告されている。このBRCA1/2に加えてATM, ATR, PALB2, RAD51などの遺伝子もDNA相同組み替え修復(HRR)に関与するが、がん組織から抽出したDNAを用いたシーケンスで見つかったHRR関連遺伝子異常と膵癌家族歴との関連や、白金製剤であるオキサリプラチンに対する感受性に関しては報告がない。そこでこれまでに当院でがん組織から抽出したDNAを用いたがん遺伝子パネル検査を受けた膵癌28症例を対象に、HRR関連遺伝子異常と膵癌家族歴との関連、ならびにオキサリプラチンレジメンに対する治療効果について検討を行った。28症例中、13症例(46%) にHRR関連遺伝子上に一つ以上のアミノ酸変異を伴う遺伝子変異を認めた。この13症例中膵癌家族例を有していたのは1症例のみであり、膵癌の家族歴とがん遺伝子パネル検査時のHRR関連遺伝子変異陽性との関連は低いと考えられた。また28症例中、オキサリプラチンレジメンによる治療をうけた17症例の解析で、HRR関連遺伝子異常を有する8症例の無増悪生存期間は20.8か月であったのに対し、対照群9症例では1.7か月と、前者の方が優れていた(ハザード比 0.32, 95%信頼区間 0.10-1.06, P=0.049)。これらの内容は国際学術誌に報告した(Kondo T and Kanai M et al., OncoTarget 2018)。
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