本年度は、HERC2とssDNA結合タンパク質replication protein A (RPA)の関係について重点的に解析を行った。その結果、RPAはHERC2のC末端HECTドメインに結合すること、RPAのサブユニットであるRPA2のin vivoにおけるユビキチン化がHERC2のノックダウンおよびE3活性を死活させたHCT116-HERC2ΔE3/ΔE3細胞で著明に抑制され、HERC2のC末端ドメインの再導入でその抑制が解除されることから、HERC2がRPA2を基質とするE3であることが判明した。一方、HERC2はRPA2のリン酸化を制御していることを突き止めた。HeLa細胞およびHCT116細胞において、HERC2のノックダウンは軽度DNA複製ストレス下で生じるATR依存的なRPA2 Ser33残基のリン酸化をほぼ完全に抑制することから、HERC2はこのリン酸化に必須であることがわかった。一方、HCT116-HERC2ΔE3/ΔE3細胞では逆にSer33リン酸化RPA2 が蓄積すること、ATR阻害剤がRPA2のリン酸化を阻害すると同時に内因性のHERC2によるRPA2のユビキチン化を阻害することから、HERC2がATRによってリン酸化されたRPA2をユビキチン化して分解に導くことが強く示唆された。さらに、その生理学的な意義として、グアニン4重鎖(G4)解除において、HERC2およびRPAがエピスタシスな関係であること、RecQヘリカーゼであるBLM、WRNとRPAがエピスタシスな関係にあることから、HERC2が、BLMとWRNによるG4を含めたDNAの2次構造の解除に必要な複製フォークのssDNAへのRPAの供給に重要な役割を果たしていることが分かった。
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