研究実績の概要 |
腫瘍部および非腫瘍部のホルマリン固定パラフィン包埋検体からDNAを抽出,QIAseq Human Breast Cancer Panel (DHS-001Z, QIAGEN)にてライブラリィを作成,NGSはMiSeq (Illumina)を使用した。 2010年~2017年までの間に,川崎医科大学で乳癌の再発・転移と診断された病理組織検体(細胞診のみの症例は除く)は107症例であった。このうち、原発巣と再発・転移巣の両方のパラフィンブロック検体が利用可能であり,かつ十分な腫瘍細胞数(≧20%)があると判断されたものは35例であった。85サンプル中43サンプルが,QCスコア0.04以下であり良好なDNAが得られた。古い症例ではDNA断片化が強い傾向であった(P<0.001)。正常組織,原発巣と少なくとも1病変以上の再発・転移巣が同時に解析できたのは,11症例(36サンプル)であった。このうち5例(45.4%)では,原発巣では認識できなかった遺伝子変異を再発・転移巣で認めた。新たに検出した変異はATR, BLM, CBFB, EP200, ERBB2, MUC16, PBRM1, PIK3CA, TP53であった。また,CNV変化は多岐にわたったが,局所再発よりも遠隔転移で有意にCNV変化数が多かった(P=0.020)。なお、ERBB2 p.S310Fは遺伝子増幅を伴わない活性型変異とされている。CNV変化としてはCCND1やEGFR増幅が新たに生じた症例があった。【考察】再発・転移巣で新たに検出される遺伝子変化は決して少なくないことが明らかとなった。また,HER2免疫染色陰性であるが,neratinib感受性と思われるERBB2変異や,CDK阻害薬,EGFR阻害薬が有効と推定される症例を拾い上げることができた。
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