研究課題
神経膠腫(グリオーマ)は腫瘍細胞の高度な浸潤能と異常な血管新生によって特徴付けられる脳悪性腫瘍である。本腫瘍の悪性化や異常血管新生には、細胞外マトリックス(ECM)の産生と分解によって創出された特異な組織内微小環境が関わると推定されているが、神経膠腫組織内微小環境因子として働くECM分子に関する情報はきわめて限られている。本研究では、ECM分子の一つであるフィビュリン-7(Fibulin-7 = Fbln7)がヒト膠芽腫における異常血管の血管内皮細胞と周皮細胞で高発現することを明らかにした。また、vascular endothelial growth factor(VEGF)刺激した培養血管内皮細胞がFbln7を発現亢進するとともに、Fbln7はそのN末端ドメインを介してangiopoietin-1(Ang1)に特異的に結合することでAng1/Tie2シグナルを阻害し、結果としてAng2-/Tie2系を優位に導くことでVEGF誘導性異常血管形成に関わる可能性が明らかとなった。本年度は、Fbln7が膠芽腫や退形成性星細胞種の浸潤先端部の腫瘍細胞においても発現することを新たに見出した。そこで、培養膠芽腫細胞株を用いたスクラッチアッセイで検討し、膠芽腫細胞の移動能はFbln7上で促進することを証明した。対照群の細胞に比べて、Fbln7上での膠芽腫細胞はより紡錘形の形態を示し、F-actin、vinculin、 FAKに対する抗体を用いた蛍光抗体法では焦点接着の形成など、運動能亢進に対応する所見が得られた。これらのデータから、Fbln7は膠芽腫における異常血管新生とともに膠芽腫細胞の浸潤促進作用を有する可能性が示唆された。
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