本研究では、脂肪肝に高発現する機能未知タンパク HPD1 の機能解明を目的とした。本来HPD1 は脂肪肝に高発現する遺伝子として見出されが、現状、唯一の HPD1 発現株である 3T3-L1 脂肪細胞からHPD1をノックダウン(KD)し、機能解明のためのツールとした。 【HPD1KD-3T3-L1脂肪細胞における細胞形態の変化】コントロール細胞との比較において、HPD1KD細胞の細胞形態に明らかな変化は認められなかった。また脂肪滴特異的な蛍光試薬による細胞内脂肪滴の染色の結果においても、両細胞の脂肪滴の大きさ、数そして形状などにも変化は認められなかった。 【HPD1KD-3T3-L1脂肪細胞を用いたGeneChip解析】コントロール及びHPD1KD細胞からそれぞれmRNAを抽出し、GeneChip解析を行った。この結果、コントロール細胞に比べHPD1KDにより発現が2倍以上に上昇した遺伝子は61遺伝子、コントロールに比べHPD1KDにより発現が1/2以下に減少した遺伝子は36遺伝子であった。これら発現レベルが変動した遺伝子群の中には、脂質代謝、糖代謝、サイトカイン受容体及び細胞骨格関連遺伝子が含まれていた。 【HPD1によるhexokinase遺伝子の制御】Genechip解析の結果より、グルコースのリン酸化酵素であるhexokinase mRNAの発現が減少することを見出した。更にHPD1KD-3T3-L1脂肪細胞においては、hexokinase活性及びそのタンパクレベルもコントロール細胞に比べ有意に減少した。 本研究の成果により、HPD1のKDは多くの遺伝子発現に影響を及ぼすことが明らかになった。我々はすでにHPD1が細胞骨格タンパクを含む画分に局在していることを明らかにしている。よって脂肪細胞におけるHPD1の機能として、他のタンパクを介した間接的な遺伝子発現調節が示唆された。
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