研究課題/領域番号 |
17K08840
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
長岡 功 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60164399)
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研究分担者 |
桑原 京子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10167976)
射場 敏明 順天堂大学, 医学部, 教授 (40193635)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ectosome / alarmin / 敗血症 / 好中球 / 細胞外小胞 / 抗菌ペプチド / cathelicidin / LL-37 |
研究実績の概要 |
近年、敗血症において、好中球からエクトソームectosome と呼ばれる細胞外小胞が放出されことが報告され、エクトソームの敗血症の病態における役割が注目されている。本研究では、危険信号分子アラーミン(alarmin)である抗菌ペプチドLL-37のエクトソーム放出作用に注目して、エクトソームの敗血症の病態における役割を検討した。 昨年度、敗血症モデルとしてマウスの盲腸結紮穿孔モデルを用いて、LL-37によるエクトソーム放出について検討した。その結果、LL-37の尾静脈内投与によって、腹腔浸出液と血漿において、Ly6G(好中球の表面マーカー)とannexin V(細胞表面ホスファチジルセリン)に陽性のエクトソームの数が増加し、マウスの死亡率が低下することがわかった。 そこで、今年度は、LL-37が好中球に作用してエクトソームを放出させるかどうか、さらに放出されたエクトソームが敗血症モデルに対して保護的に作用するかどうかを調べた。 その結果、マウスの骨髄から単離した好中球にLL-37を作用すると、LL-37がホルミルペプチド受容体やケモカイン授与体を介して、エクトソームを放出することがわかった。また、放出されたエクトソームは抗菌作用を有していること、さらに、エクトソームを敗血症モデルに投与するとマウスの死亡率が改善することがわかった。 以上の結果から、危険信号分子アラーミンであるLL-37は、敗血症モデルにおいて好中球に作用して、抗菌作用を有するエクトソームの放出を誘導することによって、敗血症の病態を改善する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究によって、敗血症モデルにLL-37を投与することによって、腹腔浸出液と血漿においてエクトソームの数が増加し、マウスの死亡率が低下することがわかった。 そして今年度は、LL-37が好中球に作用するとエクトソームが放出されること、また放出されたエクトソームが抗菌作用を有していること、さらにエクトソームを敗血症モデルに投与するとマウスの死亡率が改善することがわかった。 これらの結果から、LL-37は敗血症モデルにおいて好中球に作用して、抗菌作用を有するエクトソームの放出を誘導することによって、敗血症の病態を改善する可能性が示唆された。 しかし、ヒト敗血症患者におけるLL-37とエクトソームの動態については解析が十分なされておらず、今後の検討課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究によって、危険信号分子アラーミンである抗菌ペプチドLL-37は敗血症モデルにおいて好中球に作用して、抗菌作用を有するエクトソームの放出を誘導することによって、敗血症の病態を改善する可能性が示唆された。 今後さらに、ヒト敗血症患者におけるLL-37とエクトソームの動態について解析することによって、敗血症の病態におけるLL-37とエクトソームの役割をより正確に評価し、LL-37を用いた安全かつ有効な敗血症治療法を開発に役立てたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究において、ヒト敗血症患者におけるLL-37とエクトソームの動態について解析を十分に行うことができなかった。そこで、その解析を引き続き行うため次年度に予算を計上した。
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