研究課題
平成29年度は、今後の研究継続において基盤的役割を果たす、腹腔鏡手術習得のためのトレーニングモデルと評価方法の確立を行った。北海道大学病院シミュレーションセンターにて、豚臓器を利用した腹腔鏡手術手技シミュレーショントレーニングを開始し光学機器、腹腔鏡手術鉗子は全て実際の手術で使用されるものを使用した。トレーニングの参加は自由意志で、トレーニングデータの研究利用については北海道大学病院自主臨床研究委員会で承認を取得し、参加者より書面での同意を取得した。参加者の年齢、腹腔鏡手術の経験症例数を含む背景因子をアンケートにて回収後、参加者はタスク1:大動脈周囲のリンパ節郭清、タスク2:腎血管処理、タスク3:腎実質縫合の3つのタスクを行った。トレーニング中の動画は録画し、後の解析に使用した。開発した3つのトレーニングタスクに関して、研究代表者を含む3人の腹腔鏡手術技術認定医が、熟練者、初心者のビデオ1本ずつを視聴し、研究代表者の作成した評価項目案に対して、デルファイ法を用いて改良を加え、技術評価票を決定した。これまで12回のトレーニングを開催し医師32名/医学生7名が、のべ56回のトレーニングを行った。タスク1の55動画、 タスク2の49動画、タスク3の55動画が解析に使用できた。これら159動画を対象に、2名の評価者が今回開発した技術評価票に従い技術評価を行った結果、評価点数の相関係数はr=0.74 (p< 0.0001)と高い相関を認めた。また、トレーニング参加者を腹腔鏡手術の術者経験症例数で0-10件、11-49件、50件以上の3群に分けたとき、3つのタスク全てで、各群の平均値に有意差を認めた(ANOVA test, p<0.0001)。以上の観察結果より、開発した3つのトレーニングモデルは、技術評価のアセスメントツールとして今後の研究に継続的に使用可能であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
前述のごとく、シミュレーショントレーニングの基盤的役割を果たす、豚臓器を用いた腹腔鏡技術手技トレーニングモデルが確立できた。
平成29年度に開発したトレーニングタスクは、モデルのvalidation studyの結果として現在論文作成中である。今後も本トレーニングを用いた腹腔鏡トレーニングを定期開催し、さらにデータを蓄積し、学習者のラーニングカーブの特徴を解析する。その他、現在、バーチャルリアリティーシミュレーターの腎摘除術のモジュールについて、熟練者、初心者の判別が可能であるかどうかの研究の準備中である。また、生体豚での腹腔鏡手術トレーニングを年2回のペースで開催している。トレーニング中の動画は全て保存されており、学習者のラーニングカーブの評価に使用可能である。参加者のフィードバックを集積することで各トレーニングモデルの意義、内容の妥当性、ラーニングカーブ等を論文化可能であると考えている。また、手術中の突発的なインシデントを想定したシナリオトレーニングの開発を進めていく予定である。
トレーニングに使用する針、糸に関して、当初予想していたよりも低価格で賄うことができた。繰越金については、平成30年度に、トレーニング用ドライボックスの購入に使用を予定している。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
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