研究課題
平成30年度は、平成29年度に開発したブタ臓器を用いた腹腔鏡手術手技シミュレーショントレーニングを継続した。医師、医学生を対象とし、参加者は3つのタスク(1: 大動脈周囲のリンパ節剥離, 2: 腎動脈の剥離とヘモロックでの処理, 3: 腎実質縫合)を行い、トレーニング中の動画は録画し、後日2名の技術認定医がGlobal Operative Assessment of Laparoscopic Skills (GOALS, Am J Surg 2005)に従い技術評価した。2名の平均点を解析に使用した。トレーニング終了時、参加者の腹腔鏡手術執刀件数、技術認定取得の有無を含む背景因子と、各タスクのNASA-TLXを用いた主観的精神作業労働負荷を回収した。①技術評価に関して、GOALSの点数と執刀経験数 (Expert:50例以上、Intermediate 11-49例、Novice:0-10例)の関連、②ROC解析を用いた腹腔鏡技術認定医か否かの判別、③精神作業負荷に関してNASA-TLXと執刀経験数との関連、④リピーターのGOALS/NASA-TLXの推移を評価した。これまでに、医師40名、医学生14名が参加した。15名は複数回参加した。54名の初回トレーニング時の技術評価では、3つのタスクすべてで、Expert 13名、Intermediate 8名、Novice 33名の3群間にGOALSの点数に差を認めた (Kruskal-Wallis test、p<0.001)。ROC解析でも腹腔鏡技術認定取得の有無を良好に予測できた(AUC>0.95)。NASA-TLXは、タスク1とタスク2で3群間に差を認めた( Kruskal-Wallis test、p<0.05)。リピーター15名のGOALS/NASA-TLXでは、技術向上、精神作業労働負荷軽減を示す参加者を認めた。さらなるデータ集積を計画している。
2: おおむね順調に進展している
前述のごとく、シミュレーショントレーニングの基盤的役割を果たす、豚臓器を用いた腹腔鏡技術手技トレーニングモデルが確立とvalidation studyが終了した。その他、バーチャルリアリティーシミュレーターの腎摘除術のモジュールについて、熟練者、初心者の判別が可能であるかどうかの研究を行った。この結果は論文投稿準備中である。
本トレーニングモデルのvalidation studyの結果として現在論文作成中である。今後も本トレーニングを用いた腹腔鏡トレーニングを定期開催し、リピーターのデータを蓄積し、学習者のラーニングカーブの特徴を解析する。また、本トレーニング中の鉗子の動きについてmotion capture装置を用いた計測を計画中である。手術手技の習熟度の可視化を行うことで、より効率的なトレーニングが可能となるのではないかと考えている。その他、手術中の突発的なインシデントを想定したシナリオトレーニングの開発を進めていく予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
BJU Int.
巻: 122 ページ: 1075-1081
10.1111/bju.14376
Postgrad Med J.
巻: 94 ページ: 270-277
10.1136/postgradmedj-2017-135351
J Surg Educ.
巻: 75 ページ: 758-766
10.1016/j.jsurg.2017.09.005
巻: 75 ページ: 458-464.
10.1016/j.jsurg.2017.08.017
Jpn J Clin Oncol.
巻: 48 ページ: 771-776
10.1093/jjco/hyy094
Int J Urol
巻: 25 ページ: 699-700
10.1111/iju.13584
Jpn J Clin Oncol
巻: 48 ページ: 1001-1011
10.1093/jjco/hyy128