研究課題/領域番号 |
17K09025
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
村手 隆 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (30239537)
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研究分担者 |
鈴木 元 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (80236017)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | paclitaxel resistance / prostate cancer cell / sphingolipid metabolism / SPHK1 / GCS / ASMase and NSMase2 / proteazome inhibitor / HDAC inhibitor |
研究実績の概要 |
タキソイド系抗がん剤は固形腫瘍の治療に汎用されているが、症例により無効であったり、治療の経過で耐性が出現して臨床上の大きな問題となっている。我々は、パクリタキセル (PTX) 耐性前立腺癌細胞株 PC3-PRとその親株 PC-3 を用いて、スフィンゴ脂質代謝系の変化がこの耐性化機序に関与しているかどうかを検討した。PTX (20 nM) はPC-3の細胞増殖を抑制し、細胞内セラミドを増加させたが、PC3-PRではそのような変化は認められなかった。また、PC3-PRは親株 PC3 に比してsphingosine 1-phosphate (S1P)の増加を認め、それはPTX処理によっても変化しなかった。Western blotting による蛋白の発現レベルの解析では、PC3-PR 細胞株はPC3 細胞株に比べてsphingosine kinase 1 (SPHK1) 及び glucosylceramide synthase (GCS) の増加と、酸性スフィンゴミエリナーゼ (ASMase) と中性スフィンゴミエリナーゼ (NSMase 2) の低下が明らかとなった。SPHK1 siRNAあるいはSPHK1活性阻害剤は、PC3-PR細胞のS1Pレベルを低下させ部分的にそのPTX 耐性を減弱させた。同様に、GCS 阻害剤 (PDMP及びPPMP) は PC3-PR 細胞の細胞内セラミドを増加させ、PC3-PR 細胞の増殖を抑制した。さらに、プロテアゾーム阻害剤やヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、PC3-PR 細胞のSMaseの活性を上昇させ、細胞内セラミドレベルの上昇と増殖抑制を招いた。これらの結果は、スフィンゴ脂質代謝酵素の発現並びに活性の変化が、セラミドとS1Pとの比として理解されているスフィンゴ脂質レオスタットを変化させ、PTXに対する耐性化に関与している事を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画の一年目にして、一つのテーマを論文化して公表する事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
第2のテーマ、エクソソーム解析によるスフィンゴ脂質代謝産物の質量分析の基礎実験は、まだ技術的な問題が解決できておらず、地道に基礎的な検討を繰り返している。 そこで、この実験テーマは共同研究者の鈴木元教授と実験を繰り返す事としつつ、第3のテーマファイトケミカル特にレスベラトロールの4量体、バチカノールCの殺細胞効果のテーマをスピードアップして、平成30年度の論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
501円未使用であるが、小額であるので来年度の消耗品費として速やかに支出される。
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