研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)の治療は近年DAAが開発された。DAAにより治療効果は飛躍的に高まったが、ウイルス排除の目的はHCV持続感染による慢性肝疾患と全身状態の改善と、肝発がん予防である。しかし、HCVの長期間にわたる持続感染による肝炎による細胞障害、組織障害の分子機構と治療によるその可逆性についてはよくわかっていない。本研究ではHCV感染モデルを用いて、HCV持続感染による肝障害の微細構造変化および遺伝子発現変化について解析し、DAA治療によるウイルス排除後の肝障害改善に資する基盤的研究を実施する。このために、新規HCV感染モデルの構築を行っている。ウイルス培養系において、HCV未感染細胞、HCV感染細胞、HCV排除細胞を区別できる実験系を構築するためにCre-loxPによるスイッチング発現系を利用する。感染レポーターカセットとしてloxp配列にはさまれた、RFP遺伝子の下流にGFP遺伝子を配置した。このレポーターカセット遺伝子をHuh751細胞にトランスフェクションして薬剤選択培養とソーティングにより、FACS解析で約50%の細胞がRFP陽性となるHuh751-RG細胞株を樹立した。Huh751-RG細胞のHCV感受性は親株と同等であった。さらにCreを発現する組み換えHCV(HCV-Cre)を構築した。HCV-CreをHuh751-RG細胞に感染することにより遺伝子組み換えがおこり、GFP発現細胞を確認できた。レポーター発現の異なる細胞のソーティングすることにより、感染細胞と非感染細胞の分離を試みている。
2: おおむね順調に進展している
29年度研究計画のHCVレポーター細胞、Cre発現ウイルスを開発でき実際に遺伝子組み換えがおこり、レポーター遺伝子発現の変化が観察できた。30年度以降はこの実験系を用いて、HCV感染前後の細胞内変化を観察できる。
まず、HCV感染による肝細胞の微細構造変化を解析する。これまで、HCVキャリア患者の肝組織像を解析すると微細構造変化を観察したので、培養細胞で同様の現象を解析する.また、感染細胞をDAAで治療することによりウイルスを排除する。このウイルス排除細胞での細胞内微細構造変化の持続あるいは消失について検討する.これは臨床におけるSVR後の肝障害の持続やHCCの発症の基礎検討につながる。また、微細構造変化だけでなく、遺伝子発現プロファイルについても解析を実施する。
今年度予定していた感染細胞の解析ができなかったため、29年度の使用額が予定よりも少なくなった。細胞の解析は30年度に実施する予定である。
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