正常ボランティアおよびシミュレーターを用いたマイクロ波レーダーの頸静脈波形記録については、2021年3月に成果をまとめ英語論文(査読付)として発表した。マイクロ波レーダーの頸静脈波形モニタの臨床上のニーズに関して、心不全診療の分野において検討を行った。その結果、頸静脈波形における2つの谷(収縮期のx谷および拡張期のy谷)の深さにおけるパターン認識が最も有用であると考えられた。正常パターンとしてのx谷がy谷より深いもの、一方右室進展障害パターンとしてy谷がx谷より深いものに2分され、この鑑別が心不全の予後の推定および治療方針の決定に重要であることが、他施設および自施設からの報告より明らかになってきた。特に、心不全治療においては根幹的な治療であるβ遮断薬による徐脈化が、右室進展障害パターンにおいては不利に働く可能性がある。本研究プロジェクトはこれで最終の形になるが、今後はさらに本方法の簡便化を進めるため、測定機器の小型化、無線化、解析システムの簡素化、結果表示法などの検討が課題であると考えられた。この研究を進める上で、マイクロ波レーダ装置の社会実装には、製品化をめざしたパートナー企業との連携が必要であると感じた。この2年間、様々なアプローチで模索をしたが、結果としては持続的な提携に至らなかった。原因としては、頸静脈波形記録の臨床的有用性のエビデンスとインパクトが不十分であると考える。今後はこの点に関して、英語論文などの情報発信を積極的に行なっていく方針である。
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