研究課題
本年度は,ブレオマイシン肺線維症を惹起された個体で減少する「CD45 (-)/ALDH高発現細胞 (br:bright)」についてさらなる検討を行った.この細胞集団「CD45 (-)/ALDH (br)」は全肺の1%弱と稀な集団であるが,CD45 (+)細胞や「CD45 (-)/ALDH低発現細胞 (dim)」と比較して,高い細胞増殖能とコロニー形成能を有する.ALDHのアイソザイム別に検討すると,「CD45 (-)/ALDH (br)」は「CD45 (-)/ALDH (dim)」と比較して,ALDH1a系統のmRNAを強く発現していた.また,「CD45 (-)/ALDH (br)」は,その表面抗原マーカーによってさらに,「CD45 (-)/ALDH (br)/PDGFRα (+)/EpCAM (-)」「CD45 (-)/ALDH (br)/PDGFRα (-)/EpCAM (+)」「CD45 (-)/ALDH (br)/PDGFRα (-)/EpCAM (-)」の3群に分類され,肺線維症で有意に減少する分画は「CD45 (-)/ALDH (br)/PDGFRα (+)/EpCAM (-)」であり,この「CD45 (-)/ALDH (br)/PDGFRα (+)/EpCAM (-)」分画の割合と肺の線維化の指標であるハイドロキシプロリン値が有意な負の相関を示すことを明らかとした.Day0にブレオマイシンで肺線維症を誘導したマウスに対してDay2に「CD45 (-)/ALDH (br)/PDGFRα (+)/EpCAM (-)」を静注することで減少するマウスの「CD45 (-)/ALDH (br)/PDGFRα (+)/EpCAM (-)」分画の回復,線維化の抑制,死亡率の抑制が得られた.以上の検討から,「CD45 (-)/ALDH (br)/PDGFRα (+)/EpCAM (-)」はブレオマイシン肺線維症を抑制する有用な細胞治療のツールであることを明らかとした.
2: おおむね順調に進展している
我々が本研究で当初計画したとおり,「CD45 (-)/ALDH (br)」が肺線維症発症に伴い減少すること,また,「CD45 (-)/ALDH (br)」を肺線維症に対する細胞治療ツールとして移入することで,線維化を抑制し肺線維症マウスの死亡率を低減させることを初めて明らかとできている.研究計画の大部分が解決されたものの,まだ未解明な部分として経静脈的に肺線維症マウスに移入した「CD45 (-)/ALDH (br)」細胞の局在および定着する期間を検討することが必須であると考えている.この識別のため,初年度以降遺伝子改変マウス (ROSA26 H2B-mCherryノックインマウス)を購入し,繁殖を目指しているが,予想に反して雌マウスの妊娠が成立せず,追加購入を繰り返している.
遺伝子改変マウス (ROSA26 H2B-mCherryノックインマウス)を再購入し,繁殖を確立し,実験に使用することで肺線維症マウスに移入した「CD45 (-)/ALDH (br)」細胞の局在および定着する期間を明かとする.この点を解決できれば,本研究は論文として専門誌に結果を投稿することが可能であると考えている.
注文依頼していたmCherryノックアウトマウスのRIKENからの再購入および搬入が予定よりも遅れ,次年度の購入予定に変更となったため.
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (4件)
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