研究課題/領域番号 |
17K09780
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
村井 弘之 国際医療福祉大学, 医学部, 主任教授 (80325464)
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研究分担者 |
槍澤 公明 公益財団法人総合花巻病院(臨床研究部), 神経内科, 神経内科部長 (00244913)
松下 拓也 九州大学, 大学病院, 講師 (00533001)
今井 富裕 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (40231162)
本村 政勝 長崎総合科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70244093)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 重症筋無力症 / クリーゼ / 臨床疫学 / メッセンジャーRNA |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、重症筋無力症クリーゼの病態を解明することである。クリーゼは重症筋無力症増悪の究極の形であると考えられる。つまり、クリーゼの病態解明は重症筋無力症増悪の機序を解明することにつながる。 クリーゼの病態解明のために、当研究では以下の点を実施していきたいと考えている。第一は、臨床疫学的な面からみたクリーゼの病態解析である。すなわち、各種の臨床パラメータとクリーゼ発症との関連を検討するものである。第二は、メッセンジャーRNAの網羅的解析を行うことによって行うクリーゼの病態解析であり、増悪時に発現する遺伝子を同定するものである。 今年度は主に前者を行った。多施設研究にて罹病期間2年以上10年未満の全身型重症筋無力症369例を集積、これをクリーゼの既往がある45例(クリーゼ群)とクリーゼの既往のない324例(非クリーゼ群)とに分けた。男女比は両群で差はなく、発症年齢はクリーゼ群の方が2歳ほど高かった。抗AChR抗体陽性率はクリーゼ群で88.9%、非クリーゼ群で81.2%とクリーゼ群で高かった。抗MuSK抗体陽性率(抗AChR抗体陰性症例における割合)はクリーゼ群で40.0%、非クリーゼ群で13.1%とクリーゼ群で圧倒的に高かった。早期速効性治療(クリーゼに対する処置以外)の実施率は、クリーゼ群で35.6%、非クリーゼ群で50.6%であり、早期速効性治療がクリーゼの抑制に寄与していることが示唆された。ここでいう早期速効性治療とは、病初期に免疫グロブリン、血漿交換、ステロイドパルスなどを行うことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度には臨床疫学的研究を施行し、加えて関連施設内にクリーゼの症例があればRNAの採取を行い、網羅的解析により発現遺伝子の同定の予定であったが、今年度はクリーゼの症例がなかったために臨床疫学的研究のみとなった。
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今後の研究の推進方策 |
臨床疫学的研究においては、さらに詳細な解析を進める。具体的には、クリーゼと各種治療法との関係を検討する。クリーゼの症例が生じた場合には、極期(治療前)と、その後の症状安定期(寛解期)の両方でRNAを抽出し、高速シーケンサーで解析を行い、両者で遺伝子発現を比較する。この結果を解析することにより、治療抵抗性クリーゼに関連した遺伝子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回、関連施設内にクリーゼの症例がなかったために、RNA抽出、高速シーケンサー解析などを行う必要がなかった。したがって、これらの費用を次年度持ち越しとした。 重症筋無力症クリーゼは頻度が低く、またいつ起きるか予想がつかない。次回関連機関内でクリーゼが発症した場合には、RNA抽出、高速シーケンサーによる解析を行う。臨床疫学的研究は引き続き行う。
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