研究課題
本研究の目的は、重症筋無力症でクリーゼが起きるときにどういうメカニズムが働いているかを解明することである。クリーゼは重症筋無力症増悪の究極の形であり、クリーゼの病態解明は重症筋無力症増悪の機序を解明する手がかりになる。クリーゼの病態解明のためのロードマップとしては以下を考えた。第一は、臨床疫学的な面からみたクリーゼの病態解析である。すなわち、各種の臨床パラメータとクリーゼ発症との関連を検討するものである。第二は統計学的手法を駆使してクリーゼの危険因子を同定することである。そして、第三は、メッセンジャーRNAの網羅的解析を行うことによって行うクリーゼの病態解析であり、増悪時に発現する遺伝子を同定するものである。疫学的解析では、多施設研究にて罹病期間2年以上10年未満の全身型重症筋無力症369例を集積、これをクリーゼの既往がある45例(クリーゼ群)とクリーゼの既往のない324例(非クリーゼ群)とに分けた。抗AChR抗体陽性率はクリーゼ群で高かった。抗MuSK抗体陽性率はクリーゼ群で圧倒的に高かった。早期速効性治療(クリーゼに対する処置以外)の実施率は、クリーゼ群で低く、早期速効性治療がクリーゼの抑制に寄与していることが示唆された。リスクファクター解析では10件のcase-control研究および本邦の多施設研究にてメタアナリシスとロジスティック回帰分析を実施した。その結果、10件のcase-control研究では球症状、クリーゼの既往、疾患の重症度、肺活量の低下があがったが、多施設研究の解析では、最悪時の球症状QMGがOR 2.02と最大のリスクファクターであることが示された。RNAの網羅的解析が現在遅れ気味である。
4: 遅れている
全国多施設研究による臨床疫学的解析、およびクリーゼのリスクファクターの統計学的解析については予定通り進行したが、予想よりもクリーゼの患者が少なくメッセンジャーRNA解析の部分が遅れ気味である。
臨床疫学的研究においては、さらに詳細な解析を進める予定である。クリーゼのリスクファクターの解析については、クリアカットなデータを出すことができた。クリーゼの症例が生じた場合には、極期(治療前)と、その後の症状安定期(寛解期)の両方でRNAを抽出し、高速シーケンサーで解析を行い、両者で遺伝子発現を比較する。この結果を解析することにより、治療抵抗性クリーゼに関連した遺伝子を同定する予定である。クリーゼ患者が出現しない場合には重症のケースにて同様に検索を行い、重症化に関連した遺伝子発現を検索する。
重症筋無力症クリーゼの患者が少なかったためにメッセンジャーRNAの解析分の金額の差が生じた。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
Therapeutic Advances in Neurological Disorders
巻: 13 ページ: 1-9
10.1177/1756286420904207
Muscle & Nerve
巻: 60 ページ: 14-24
10.1002/mus.26447
Journal of the Neurological Sciences
巻: 407 ページ: 116419~116419
10.1016/j.jns.2019.08.004