研究課題
本研究では,HTLV-1感染細胞由来エクソソームによる関節リウマチ滑膜細胞の活性化機構について基礎的研究を進め,HTLV-1陽性関節リウマチの病態修飾機構を解明する.これまで,HTLV-1感染細胞株はHTLV-1非感染細胞株に比べてエクソソーム産生が亢進しており,HTLV-1感染細胞由来エクソソーム中にはRNAやDNAが大量に含有されていること,HTLV-1関連蛋白をコードするmRNAが存在することを証明した.エクソソームとTNFαやIFNγで共刺激した関節リウマチ滑膜細胞では,IL-6,CXCL10やRANTESの遺伝子発現が,それぞれのサイトカイン単独で刺激した場合よりも亢進しており,エクソソームが炎症性メディエータとして機能することが明らかとなった.網羅的サイトカイン測定によっても同様の結果が得られており,そのパターンから活性化する転写因子の検討を行った.これら実験系による遺伝子発現の一部はNFkB阻害剤で抑制されることから,エクソソーム由来のRNAやDNAを外来核酸として認識する細胞内受容体のTLR3, 9およびRIG-IについてRNA干渉による関節リウマチ滑膜細胞の発現抑制実験を行った.RIG-Iの発現抑制においてのみエクソソーム誘導性遺伝子発現が一部抑制されたが,その遺伝子発現抑制は顕著ではなく,他の核酸認識受容体や補助因子の存在が疑われる結果となった.外来核酸認識受容体は複数存在するため,関節リウマチ滑膜細胞においてTNFαやIFNγ刺激によって発現が亢進し,NFkB活性化に関与する受容体の発現をさらに詳しく検討することが課題となった.
3: やや遅れている
外来核酸認識受容体は複数存在するため,今回検討した受容体以外の受容体に関しても検討する必要がでてきたため。
2017年度に検討した核酸認識受容体以外の受容体について,TNFαやIFNγで刺激した関節リウマチ滑膜細胞における発現を定量PCRやイムノブロット法で検討する.NFkBを介したシグナル伝達へ関与する受容体に絞り込み,さらに効率的にエクソソーム誘導性シグナルに重要な受容体の同定を目指す.同時に,2018年度研究計画書にあげている動物実験に係る倫理審査などの準備を進める予定である.
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