研究課題/領域番号 |
17K10074
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
藤澤 泰子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (40402284)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 胎生期低栄養 / DOHaD / 精巣異形成症候群 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は仮説「胎生期低栄養環境は出生後の精巣機能障害や生殖機能障害を引き起こす」を検証しそのメカニズムを探ることである。今年度は、これまでの検討で明らかにした胎生期低栄養マウスモデルにおける胎仔精巣テストステロン産生障害の機序として、テストステロン産生の首座である胎仔ライディッヒ細胞に特異的なエピゲノム変化が生じている可能性を考えて研究を展開した。胎仔型ライディッヒ細胞特異的にEGFP を発 現するトランスジェニックマウス(Ad4BP/SF-1-EGFPマウス)を利用し、胎生期栄養制限マウスモデルの胎仔精巣からEGFPをマーカーとしてセルソーティングによりライディッヒ細胞を単離し、ライディッヒ細胞における全ゲノムメチル化解析を行なった。胎生期低栄養マウスモデルでの胎仔精巣にて発現が低下していたステロイド産生酵素関連遺伝子群について検討したが、有意なメチル化変化は認められなかった。一方これらのステロイド産生酵素関連遺伝子の発現に関与する遺伝子(UCSC Genome Browserにて検索)について検討したところ、複数の遺伝子において、有意なメチル化変化が同定された。さらにenrichment 解析を行なったところ、代謝関連パスウエイに含まれる遺伝子群に有意なメチル化変動が確認された。とくにライディッヒ細胞機能発現に重要である解糖系およびTCA 回路でのメチル化変動が目立った。 以上より、胎生期低栄養状態での胎仔精巣テストステロン産生障害の機序として、代謝関連遺伝子のエピゲノム 変化が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度において、胎仔ライディッヒ細胞のセルソーティングによる分離、およびPBAT法による網羅的メチル化解析まで進めることができた。 本研究の目的である、本研究の目的は仮説「胎生期低栄養環境は出生後の精巣機能障害や生殖機能障害を引き起こす」の検証は、すでに昨年度までに結果を得ることができており、当該年度にてエピゲノム の関与に関する結果を部分的ではあるが示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度が最終年度であるため、これまでの研究結果を総括し論文を作成している。また、本研究において、仮説「胎生期低栄養環境は出生後の精巣機能障害や生殖機能障害を引き起こす」の検証はある程度されたが、さらに生殖機能障害や内分泌動態の変動について多角的に解析することが、今後必要である。さらにメカニズムの解析として、細胞内代謝変動とエピゲノム修飾の相互作用について今後研究を展開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1平行して進行させているプロジェクトと共通の消耗品を使用している部分があり、予定額より少額の支出となった。 2当初予定していた、メタボローム 解析等の手法からPBAT法による網羅的メチル化解析に変更したため差額が生じたため。
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