研究課題
慢性皮膚粘膜カンジダ症(CMCD)は、皮膚・粘膜に難治性・反復性のカンジダ感染を呈する原発性免疫不全症である。CMCD患者の半数でSTAT1の機能獲得型変異を認め、IFN-γに対しSTAT1のリン酸化亢進を呈する。またIL-17産生障害がカンジダへの易感染性を呈する原因とされるが、その分子病態には不明な点が多い。本研究では、ヒトと相同性のあるSTAT1機能獲得型変異を導入したノックインマウス(KIマウス)を作製し、本症患者との類似性及び機能解析に有用であるかを検討した。(1)表現型の確認: KIマウスの小腸粘膜固有層リンパ球(SI-LPL)中のCD4+ T細胞では、抗原・サイトカイン刺激がない定常状態でSTAT1蛋白の発現亢進、IFN-γによるSTAT1のリン酸化亢進を示した。また同マウスではSI-LPLにおけるTh17細胞の絶対数減少及びIL-17産生低下を認めた。これはTh17細胞分化に必須であるRORγtの発現低下による分化障害によるものと考えられた。(2)カンジダへの易感染性の検証:カンジダ経胃投与3週後のKIマウスのSI-LPL CD4+ T細胞ではIL-17A産生低下及びRORγt発現抑制を認めた。小腸上皮細胞においてIL-17A産生低下に起因する抗菌ペプチドであるβ-defensin 3の発現低下を認め、小腸粘膜上皮細胞にはカンジダが検出された。Th17細胞分化障害によるIL-17A産生障害により、カンジダの排除機構が破綻しているものと考えられた。さらにTbx21の発現上昇を認め、Tbx21にコードされるT-betはRORγtの抑制因子であることから、Th17細胞の分化障害に関与していると考えた。以上より、今回樹立したKIマウスでTh17免疫応答障害を示すことが明らかとなり、今後さらなるCMCDの病態解明、治療法の開発に有用であることが示された。
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PLOS ONE
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https://doi.org/10.1371/journal.pone.0230665
International Immunology
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