本研究では、多様な臨床像を示す神経芽腫について最適な治療戦略を構築するため、神経芽腫組織の網羅的ゲノム・エピゲノムデータのメタオミックス解析を行い、悪性サブタイプに強く関連する分子的特徴を明らかにすることを目的としている。 令和元年度は国立がん研究センター研究所、国立成育医療研究センターとの共同研究により、固形小児腫瘍に高頻度に変異が報告されている211遺伝子と9種類の融合遺伝子が検索可能な小児がんに特化したがん遺伝子パネルを新たに作製し、日本小児がん研究グループ神経芽腫委員会(JCCG-JNBSG)の高リスク神経芽腫臨床試験登録例28例のゲノム解析を行った。相対リード数から計算された各遺伝子のゲノムコピー数データは、アレイCGH解析と同様のパターンが得られ、特に診断に重要なMYCN遺伝子増幅については、リアルタイム定量PCRの結果と良好な相関を示すことが確認された。パネル解析からは細胞周期調節関連遺伝子群の増幅やホモ欠失、細胞増殖因子受容体遺伝子群の増幅や変異が検出され、特異的阻害剤の適用可能性が考えられた。 並行して145例のメチロームデータについても解析を進めた。腫瘍ゲノムメチル化パターンは大きく4つのサブクラスターに分類され、MYCN非増幅かつ予後不良であった症例群は、MYCN増幅群とは異なるメチロームクラスターに分類された。これら2群間でメチル化レベルが異なり、かつ予後良好サブグループとも差が見られるゲノム領域を367箇所抽出し、遺伝子発現との相関、予後との相関などについて検索を行った。MYCN増幅群が含まれるサブグループには、予後と相関するプロトカドヘリンβのファミリー遺伝子23箇所も抽出されており、今回抽出した領域は、新たな予後マーカーの候補となると期待される。今後は既知データベースとの統合解析も進め、抽出したゲノム領域の予後マーカーとしての検証を進める。
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