研究課題/領域番号 |
17K10432
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石田 典子 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (10361073)
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研究分担者 |
中川 直 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30707013)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ユビキチンリガーゼ / タンパク分解 / ノックアウトマウス / DNA損傷修復 |
研究実績の概要 |
Ku70/Ku80複合体はDNA二本鎖切断部位に直接結合し、修復複合体のリクルートに機能する非相同末端修復を促進する重要な因子であるが、DNA末端との結合様式 より修復完了前にDNAから外れることが重要となる。その役割を担う因子として、研究代表者らはユビキチンリガーゼRNF126がKu80をユビキチン化することによ り、DSB修復を促進する重要な役割を果たしていることを発見し報告した(Ishida N et al. Mol Cell Biol. 2017;37: e00347-16)。 RNF126依存性タンパク質分解が果たす役割をマウス個体レベルで解析するために、RNF126ノックアウトマウスの解析を 行った結果、RNF126タンパク質が高い発現量を示す胸腺と生殖器において、T細胞と精子の減少がそれぞれ観察された。現在、より詳細な解析を進行中である。 また、RNF126ノックアウトマウスから胎仔線維芽細胞を作製し、RNF126欠損細胞を得た結果、これまでにヒト細胞株を用いて得られた表現型がノックアウトマウス初代細胞でも再現できることを確認した。 更に、細胞タイプ特異的RNF126ノックアウトマウスを作製した結果、RNF126を欠損したセルトリ細胞は精子形成サポートできないことが明らかになりつつある。 以上の結果は、RNF126欠損により損傷DNAの修復が不完全であることに起因すると考えられ、RNF126は胸腺におけるT細胞数の維持、精巣における生殖細胞の発生において重要な役割を果たしていることが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス個体レベルにおけるRNF126依存性タンパク質 分解が果たす役割を明らかにするために、RNF126のノックアウトマウス・コンディショナルノックアウトマウスを作製し、全身(各臓器)の表現型解析を行った 結果、観察された胸腺と生殖器における表現型の詳細な解析が進行中である。以上については予想通り、あるいはそれ以上に進んでいる。 しかし、RNF126を中心としたKu80ユビキチンリガーゼ遺伝子のヒト・ゲノム多型解析については、ノックアウトマウス・コンディショナル ノックアウトマウスの解析を優先させたことにより、遅延している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
1 RNA126ノックアウトマウスの解析 精細管において分化段階の特定の細胞に死細胞が確認されたため、マーカータンパク質に対する抗体で検出する。胎仔の発達段階における各マーカータンパク質の定量解析を行う。 2 RNA126コンディショナルノックアウトマウスの解析 セルトリ細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するTgマウス(Amh-Cre)と交配し、セルトリ細胞特異的RNF126 KOマウスを作製して、その表現型解析を行った。次年度は精原細胞で特異的にCreリコンビナーゼを発現するTgマウス(Stra8-Cre)と交配し、精原細胞特異的RNF126 KOマウスを作製してその表現型を解析・比較する。 2 RNF126を中心としたKu80ユビキチンリガーゼ遺伝子のヒト・ゲノム多型の探索の続きを行う。 3 ヒト単核球由来株化細胞を用いた表現型解析:(1) CRISPR/Cas9によるレアバリアント変異導入、(2) リアルタイムPCRによるmRNA定量、(3) イムノブロット によるタンパク質(ユビキチンリガーゼ、およびKu70/Ku80)発現量・安定性解析、(4) 表現型解析 (IR照射後のタイムコースにおけるDNA損傷修復能の比較等)に ついて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNF126のノックアウトマウス・コンディショナルノックアウトマウスの解析については予想以上に進んでいるため、H30年度はあまり実験に関わる試薬・プラスティックウェアを購入する必要がなかった。 一方で、RNF126を中心としたKu80ユビキチンリガーゼ遺伝子のヒト・ゲノム多型解析を行うためのPC一式の購入、バイオバンクで保存するヒト血液由来細胞を用いた解析等の研究情報を得るために国際学会へ参加し、学会発表を行った。 次年度は順調に結果が得られているRNF126のノックアウトマウス・コンディショナルノックアウトマウスについて、異なる細胞タイプ特異的なノックアウトマウスの表現型解析実験を行うための物品費、論文発表を行うために予算を使用する。また、遅延気味のヒト・ゲノム多型解析を実施するための物品費も予定している。
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