研究課題/領域番号 |
17K10526
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
松谷 毅 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50366712)
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研究分担者 |
萩原 信敏 日本医科大学, 医学部, 講師 (00328824)
松田 明久 日本医科大学, 医学部, 助手 (00366741)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脂肪細胞 / ミトコンドリア / 小胞体ストレス / アポトーシス / PPAR-γアゴニスト |
研究実績の概要 |
消化器癌手術後の合併症および感染症発症の原因となる外科的侵襲後の過剰な炎症性生体反応は,脂肪組織へのマクロファージ浸潤による脂肪細胞と間質細胞の機能変化およびミトコンドリアと小胞体のクロストークによるアポトーシス経路の活性化が関与していることが予想される.外科的侵襲によってマクロファージが浸潤した腹腔内脂肪組織にアポトーシス細胞を認め,その機序としてミトコンドリアによる酸化ストレスや小胞体ストレスが関与していることを明らかにする.さらにPPAR-γアゴニストを用いて脂肪細胞の核内受容体を活性化することにより,外科的侵襲時の脂肪細胞・マクロファージ機能の変化による小胞体・酸化ストレス誘導性アポトーシスへの影響を解明する.具体的には,① 臨床的腹膜炎の病態にもっとも近いとされるマウスcecum ligation and puncture(CLP)モデルから採取した腹腔内脂肪組織から脂肪細胞と間質細胞を分離し,外科的侵襲によって各細胞における酸化および小胞体ストレス誘導性アポトーシスが起きるかを検討する.②PPAR-γアゴニスト投与が,小胞体とミトコンドリア機能を変化させアポトーシス経路へ影響するかを検討する. 平成30年度は,マウスCLPモデルを用いて腹腔内脂肪組織を採取し,浸潤したマクロファージを含む間質細胞と成熟脂肪細胞を単離する.各細胞を用いて小胞体ストレス誘導性アポトーシス関連転写因子C/EBP-homologous protein(CHOP)と小胞体分子シャペロンGRP78(BiP)の誘導をRT-PCR法と免疫組織化学染色法で検討する.アポトーシスに伴いミトコンドリアではCaspase活性物質であるシトクロムCなどが放出し,電子伝達系の変化から膜電位差が消失するので,親油性・陽イオンの蛍光色素を使用して定性・定量的に解析する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスCLPモデルにおいて,脂肪組織中の循環型セリンプロテアーゼインヒビターα1-antitrypsin (臓器保護作用を示す)発現を解析した.さらに,in vitro敗血症モデルとして培養ヒト脂肪細胞株SW872培養系に小胞体 (ER) ストレス惹起因子を処置した.敗血症誘起マウスの脂肪組織内A1AT発現量は,肝臓と比べ高値であったが,Sham群と比較して低下していた.脂肪細胞培養系におけるIL-6発現並びに分泌量はERストレス惹起因子タプシガルギン(Thap)処置で促進され,この上昇はA1AT処置により抑制された.Thapは,脂肪細胞の構成的IL-1β, IL-6, IL-8発現量を著しく上昇させた.このThapによる上昇はA1ATノックダウンにより増強され,またTNFα誘導性の炎症性サイトカイン量も増加させた. 小胞体ストレス誘導性アポトーシスの実験系は順調だが,ミトコンドリア誘導性アポトーシスの実験系は結果がまだ出ていないため,やや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,マウスCLPモデルにおいて,Mitochodria Isolation Kit (BioVision)を用いてミトコンドリアを単離し,親油性・陽イオンの蛍光色素JC-1を使用してミトコンドリア膜電位差の検出を行う.CLPの腹腔内脂肪組織から単離した脂肪細胞および間質細胞での小胞体ストレス応答反応やミトコンドリアによる酸化ストレス誘導性アポトーシスを認めることが予想される.培養脂肪前駆細胞(SW872細胞)を分化・成熟させ,ヒト前単球細胞株(U937)をPMA処理でマクロファージ様細胞に分化させ,これらを共培養した.非接触法と接触法でmRNA IL-6発現を比較すると,共培養のIL-6発現量に比して,接触法は著明に高発現であった.脂肪細胞と間質細胞が接触することによってアポトーシスが誘導するのか,間質細胞と脂肪細胞が産生する液性因子によって互いに活性化されてアポトーシスが誘導されるのか,in vitroで検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:平成29年度は,全て物品費に使用したが,一部消耗品の値段と一致しなかったため差額が生じた. 使用計画:平成30年度は,前年と同様に全て物品費に使用する予定である.
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