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2017 年度 実施状況報告書

腎細胞癌のmTOR阻害剤耐性における癌幹細胞の意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K11121
研究機関秋田大学

研究代表者

沼倉 一幸  秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90566415)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード癌幹細胞 / 腎細胞癌 / mTOR阻害薬
研究実績の概要

癌幹細胞は癌の薬剤耐性を説明し得る有力な仮説であるが、mTOR阻害薬(mTORi)耐性においては、ほとんど知られていない。Aldehyde dehydrogenase (ALDH)は、細胞質においてaldehydeを炭酸へと変換する酵素であるが、癌細胞の薬剤耐性導入に関わっている可能性がある。一方、ALDHの発現が、癌幹細胞特性をもつ細胞のマーカーにもなりえる。われわれは、mTORi耐性の腎細胞癌(RCC)における癌幹細胞とALDH活性の意義を調べた。
方法ーエベロリムス(EVE)に対する感受性を有する、786-OとA-498をEVE存在下で継代培養し、耐性株(786-O EST)を樹立し、親株(786-O PAR)と比較した。ALDH活性は、ALDEFULORキットを用いて測定した。
結果ー786-O PARと比較して786-O ESTは有意にEVEに対して耐性であり(IC50: 9.9uM vs. 5.6nM)、癌幹細胞の特性を示すtumor sphere の形成能を獲得した(45.8 vs 6.3, p < 0.001)。また、786-O ESTは放射線に対する交差耐性を認めた(area % of colony at 4Gy RTx: 3.02% vs 0.55%, p = 0.01)。細胞周期は、786-O ESTでG0/G1期の割合が増加していた(53.4% vs 42.0%, p =0.04)。ALDH陽性の細胞数は著明に増加し(28.1% vs 0.3%, p < 0.001)、ALDHの特異的阻害剤であるdisulfiramの投与により、細胞分裂能は抑制された。
結論ーmTORi耐性RCCにおいて癌幹細胞特性が有意に亢進していることが明らかになった。ALDHは癌幹細胞の維持する上で重要な役割を果たしており、mTORi耐性克服の標的となる可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

留学中に行った実験データをまとめる過程で、偶然にも新たな知見を得ることができた。Harvard Universityと研究の著作権についての契約は締約済みであるので、今後も研究計画書に沿って研究を推進していく予定である。

今後の研究の推進方策

1標的候補分子のin vivoでの検証
(1)Xenograftモデルの作成ーmTOR 阻害剤耐性RCC株またはshRNAによりmTORが安定的に knock downされたRCC細胞をヌードマウス皮下に移植しxenograftモデルを作成する。
(2)特異的阻害剤およびre-purposing drugの効果ーマウスを”標的候補分子の特異的阻害薬またはre-purposing drugを腹腔内投与する群”と”vehicle群”に分け、腫瘍径を測定し効果を判定する。腫瘍縮小効果が確認できたらxenograft より腫瘍を摘出し、治療前の組織での発現と比較し、癌幹細胞の経路を中心に分子の発現を、免疫組織染色、qRT-PCRまたはウエスタンブロットで確認する。理想的には、標的分子の発現抑制と腫瘍の分裂抑制が証明できると良い。
(3)候補分子の機能解析(必要時)ーIn vitroでえられた候補分子の発現が、転写レベルか、mRNAの安定性によるものかを知ることは、その制御を考える上で重要な点である。すなわち、qRT-PCRやマイクロアレイのみでしか候補分子を検討できなかった時は、mRNAの亢進、減弱が蛋白レベルを反映しているかが不明確で、検証する必要がある。候補分子間の上流、下流関係が明らかであれば、下流遺伝子のプロモーターアッセイを行い、当該遺伝子の変化が、上流の変化の2次的なものかを検討する。このような解析により、mTOR阻害剤耐性により亢進する癌幹細胞の標的分子がより正確に特定できる。
2 臨床検体を用いた検証
標的分子の発現とmTOR阻害剤治療への反応ーRCCの手術摘出検体や生検標本で、標的分子の免疫染色またはqRT-PCRを行い、標的分子の発現の有無および局在、そして、患者のmTOR阻害剤への反応や、予後との関連を調べ、生体でin vitroとin vivoの結果を確認する。

次年度使用額が生じた理由

当初の予想より実験が順調に進んだため、消耗品や試薬の購入が少なくてすんだ。
次年度は以下に使用する計画である。
細胞培地 、血清 、動物(マウス)、抗体(WB、FC、染色等)、蛋白(成長因子等) 、核酸(shRNA、プライマー等) 、阻害薬等 、WB、FC等キット

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Clinical implications of pharmacokinetics of sunitinib malate and N-desethyl-sunitinib plasma concentrations for treatment outcome in metastatic renal cell carcinoma patients2018

    • 著者名/発表者名
      Kazuyuki Numakura, Nobuhiro Fujiyama, Makoto Takahashi, Ryoma Igarashi, Hiroshi Tsuruta, Atsushi Maeno, Mingguo Huang, Mitsuru Saito, Shintaro Narita, Takamitsu Inoue, Shigeru Satoh, Norihiko Tsuchiya, Takenori Niioka, Masatomo Miura and Tomonori Habuchi
    • 雑誌名

      Oncotarget

      巻: - ページ: -

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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