研究課題/領域番号 |
17K11299
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
寺崎 美佳 日本医科大学, 医学部, 助教 (50372785)
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研究分担者 |
永坂 真也 日本医科大学, 医学部, 助教 (00573239) [辞退]
寺崎 泰弘 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50332870)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨芽細胞分化 / 破骨細胞分化 / transdifferentiation |
研究実績の概要 |
子宮平滑筋肉腫は多彩な組織像を示すが、形態の違いに基づく治療選択は行われておらず、治療に直結する有効な治療法の開発が急務となっている。私たちは、破骨細胞型巨細胞を伴う子宮平滑筋肉腫では、骨の破骨細胞形成に必須のサイトカイン(RANKL)を産生していることを発見し、組織形態の違いが腫瘍の発生起源に関わる可能性を解明し、治療ターゲットとなり得る因子を同定することを目的に研究を行った。 RANKLの上流因子に関しては、過去に報告されているRANKL誘導作用があるサイトカイン群の関わりは薄い結果であった。しかし腫瘍組織において、RANKL以外に、オステオポンチンの高発現を有意に認めたことから、発想を転換し、骨芽細胞分化について検討を進めたところ、腫瘍細胞に骨芽細胞化を誘導する転写因子の高発現を認めた。 RANKL自体の腫瘍増殖効果に関しては、RANKL添加および持続発現平滑筋肉腫培養細胞を作成し、検討したが、増殖能への関与は明らかではなかった。このことから、RANKL自体は腫瘍増殖に寄与していない可能性を考え、他の因子での増殖関連因子を検索中である。また、腫瘍組織において骨と同様の機構がで働いている可能性を考え、腫瘍内マクロファージの特徴を多重染色により解析した。腫瘍内マクロファージおよび破骨型巨細胞では、RANKL受容体や破骨細胞分化転写因子の発現がみられ、骨吸収に関与するコラーゲン分解酵素であるCathepsin Kの強発現がみられた。 本腫瘍では、肉眼的に出血様外観を呈し、組織でも破骨細胞型巨細胞集蔟部に出血がみられることが特徴であり、これらは破骨細胞化した組織マクロファージが産生するCathepsin Kによる基質の分解が関与している可能性が示唆された。上記成果を論文としてまとめ、現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初、破骨細胞型巨細胞を伴う子宮平滑筋肉腫は、RANKL産生腫瘍であり、RANKLが腫瘍増殖に関わっているという仮定で進めていたが、解析結果より、腫瘍の骨芽細胞分化によりRANKLが高発現し、そのことが腫瘍内マクロファージの破骨細胞化を促していることを明らかにした。腫瘍増殖因子の候補として考えていたRANKLは、培養実験にて増殖と直接関わる証拠は得られなかったことから、現在骨芽細胞化因子の検討や、抑制因子の検討を行っている。また、LCMSMSを用いた網羅的蛋白発現解析において、破骨細胞型巨細胞を伴う子宮平滑筋肉腫では、コラーゲン関連蛋白が検出されない特徴がみられた。肉眼的に出血様外観を呈し、組織でもコラーゲンの減少、出血がみられることから、これらは破骨細胞化した組織マクロファージが産生するCathepsin Kによる基質の分解が関与している可能性が示唆された。上記の研究成果をまとめて、現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、治療応用を考え、今までの研究成果を元に、腫瘍の脱分化からの骨芽細胞化および腫瘍増殖機構について詳細検討を行うため、骨芽細胞分化を誘導した培養細胞をもちいて動物モデルの作成、マクロファージ抑制も含めた腫瘍抑制について動物モデルでの検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在研究のまとめとして成果を論文投稿中であり、より精緻に補助事業の目的を達するため、雑誌社から指示される追加実験の実施、英文校正に使用予定である。
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