研究実績の概要 |
目的:早期舌扁平上皮癌は、初診時早期であるにもかかわらず再発と不幸な転帰をたどる症例も少なくない。これまで予後因子については数多くの研究がなされてきたが決定打となる因子は同定されておらず、いまだ模索されている。そこで、大腸早期癌の簇出buddingという指標に注目した。簇出は、癌発育先進部間質に浸潤性に存在する単個または5個未満の構成細胞からなる癌胞巣を意味し、これは上皮間葉転換に基づく形態変化と転移能獲得に結びついていると考えられる。今回、この”簇出“という病理因子を含めて早期舌癌を解析した。 方法:2007~15年に当院にて初回根治治療を行った舌扁平上皮癌症例cT1/2N0 64例を解析対象とした。疾患特異的生存率DSS、頸部リンパ節転移発生について、臨床情報と病理学的情報、特に簇出を含めて予後因子を解析した。 結果: DSSに関する単変量解析の結果は、New cT(p=0.024)、pT(p=0.013), New pT(p=0.003), pDiameter(p=0.043), v(p=0.031), Budding Grade(p=0.018), pathological N(p=0.011)に有意差を認めた。多変量解析の結果は、Budding Grade 3のみが頸部リンパ節転移予測因子(OR 9.55, 95%CI 1.80-50.8, p=0.008)、DSS予後因子(HR 4.41, 95%CI 1.34-14.5, p=0.015)となった。 結論: Budding Grade 3は、頸部リンパ節転移発生とDSSの多変量解析後の唯一な予後因子であり、Budding Gradeが早期口腔癌の予後因子として重要であり追加治療の指標となる可能性が示された。 ほかに、周辺研究として本研究と頭頸部癌に関わるものを数編報告している。
|