研究課題/領域番号 |
17K11404
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
蝦原 康宏 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (50422291)
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研究分担者 |
小柏 靖直 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (60633956)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 簇出 / budding / 頸部リンパ節転移 / 予後因子 / 病理学的因子 / 深達度 / DOI / podplanin |
研究実績の概要 |
早期舌扁平上皮癌は、初診時早期であるにもかかわらず再発と不幸な転帰をたどる症例も少なくない。これまで予後因子については数多くの研究がなされてきたが決定打となる因子は同定されておらず、いまだ模索されている。そこで、大腸早期癌の簇出buddingという指標に注目した。平成29年度はcT1/2N0 64例を解析し、この結果は2019年Head and Neckに受理された。 (Importance of tumor budding grade as independent prognostic factor for early tongue squamous cell carcinoma. DOI: 10.1002/hed.25614) さらに、 より本質的な原発巣因子解析のために、平成30年度はanyN症例103例での解析を行った。単変量解析の結果は、pT, New pT, pDiameter, pDOI, 分化度, v, Budding Grade, pathological Nに有意差を認めた。多変量解析の結果はBudding Grade 3のみが予後因子となり、Budding Gradeが最も重要である可能性が示された。この結果は、投稿準備中である。本年度(令和元年度)は、深達度(DOI)の層別化によるBuddingの分布との相関を解析し、第43回 日本頭頸部癌学会 にて発表した。Budding悪性度が主因として、腫瘍増殖能が増し、結果として深達度に現れるという解析結果であった。また、buddingの限界を補うために、別の悪性度マーカーとしてpodplaninを指標とする方法を見出し、論文発表した。(Podoplanin is an efficient predictor of neck lymph node metastasis in tongue squamous cell carcinoma with low tumor budding grade. DOI:10.3892/ol.2020.11358.)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当施設分の舌癌症例140例の簇出(budding)の一次評価は終了し、N0症例につづいてanyN症例での英文投稿調整中である。BuddingとDOIの関連についても解析発表ずみであり、buddingの優位性が示されている結果であり、この点進捗は順調である。ただし、この方向で多施設共同研究を進めようとしたが、各施設での準備が滞っており、この点調整を必要としている。そのため、自施設での研究を進めることに注力し、病理学教室の浜田芽衣先生の協力を得て、簇出のみの評価では不十分な予測結果を補いうる補足因子としてpodpalninを免疫染色法を用いて発見した。今後は、多重免疫組織染色の機器が共同購入されたので、PD-1/2,PD-L1/2,TILなどの腫瘍免疫関連マーカーを用いて、buddingとの関連をみるべく、予備実験段階である。また、DOIの判定に関する学会発表(舌扁平上皮癌 旧cT1/2N0症例 におけるcDOI と pDOI の相関について:第30回 日本頭頸部外科学会)の検討を論文化し校正中である。
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今後の研究の推進方策 |
Budding gradeのみで分別できないrisk症例に関して、免疫染色を用いることで判定補助ができないかを、病理学教室浜田先生の協力を得て検討中である。腫瘍サイドとして、先に述べたpodplaninn以外のマーカを追加検討中である。また腫瘍免疫関連マーカーPD-1/2,PD-L1/2,TILなどを用いて、buddingとの関連をみるべく予備実験段階であり、現在実験助手が呼吸器肺癌条件を頭頸部癌解析用に調整中である。可能であれば、蓄積症例以後の新規症例(2018以降)にてこれらのリスク弁別モデルが機能しているかを、解析検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿に際して当研究費からの必要分が予想より少額であった (校正費用の倹約など)。 また、多施設共同研究に関しては他施設でのIRB申請と認可の進捗が滞り、これに対する執行が未達であった。今後は自施設での研究を優先することとし、研究費も先のpodplaninnならびに、腫瘍免疫関連マーカーPD-1/2,PD-L1/2,TILなどの多重免疫染色を用いて腫瘍先進部の免疫解析をおこなう予定。これらの消耗品は80万円ほどかかると予想されており、本年最終年度の経費を振り向ける予定。また、DOI解析の英語論文の投稿費用などが生ずる予定。
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