研究課題
歯周病と生活習慣病の関連が注目されてきたが,歯周組織の軽度炎症が惹起する体血管障害について詳細は明らかではない。そのため,本研究では,歯周組織の軽度炎症が体血管機能の悪化を引き起こすかについて,軽度の歯周組織炎症動物モデルを使用し検討した。さらに,冠動脈危険因子となる疾患の治療薬が,歯周組織の軽度炎症に伴う体血管異常を回復させるかについて検討した。8週齢ラットの両側下顎第一臼歯頬側に1週間に1度の間隔で,大腸菌由来のリポポリサッカライド(LPS)を750μg(計1500μg),および腹腔内へ150μgを投与し歯周組織炎症動物モデル(LPS群)を作成した。コントロール群では,生理食塩水を両側第一臼歯頬側および腹腔内へ投与した。さらに,スタチン群ラットでは,LPS投与に加えて腹腔内へ5mg/kgのプラバスタチンを投与した。各群において,生理食塩水,LPS,あるいはLPS+スタチンの最終投与日から1週間後に,イソフルラン3%を使用して麻酔を行い十分な麻酔深度を得た後,下顎骨および大動脈を摘出した。顎骨標本を固定染色し病理学的検討を行ったところ,コントロール群では歯周組織に炎症性変化を認めず,LPS群では軽度の炎症性変化を認めた。スタチン群では,LPS群と同様に歯周組織に軽度の炎症を認めた。また,LPS投与回数と炎症所見の比較では,3回以上LPSを投与した群では,2回のLPS投与と比較してより明らかに病理学的炎症所見を認めた。次に,ラット大動脈から作成した血管標本を使用し,フェニレフリン(300 nM)で収縮後に得られるアセチルコリン(1 nM-10 μM)による内皮依存性血管弛緩反応)について,コントロール群とLPS群およびスタチン群で比較検討した。その結果,LPS群ではコントロール群と比較し血管反応性が低下した。スタチン群ではLPS投与による血管反応性の低下が減弱した。
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Journal of Medical Investigation
巻: 66 ページ: 230~232
10.2152/jmi.66.230