本研究は、個々の生活歴から導かれた良質体験から、生活にある快でかつ情動性の高い“匂い”について探索し、個々が持つ匂いの療養効果を見出すことを試みた。生活状況や環境をイメージする匂い環境情報には、「幼いころ(過去)の生育環境」や「季節」、「ライフイベント」に関する情報が主に含まれていた。想起エピソードに対する印象の違いによる、生理的反応や表情筋電位トポグラフィによる特異的な電位変化を観察することはできなかったが、過去の記憶を想起した、主観的感覚への作用が強いことが考えられた。この事から、生活に近い匂い環境の創出は、主観的感覚を作用した療養効果を見出す可能性が考えられた。
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