研究課題/領域番号 |
17K12212
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山勢 博彰 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90279357)
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研究分担者 |
田戸 朝美 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (30452642)
山本 小奈実 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60574340)
佐伯 京子 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60759687) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クリティカルケア / 臨床倫理 / 倫理調整 / 倫理分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、臨床倫理分析・調整システムツールACTce-CCMの開発をすることである。本年度は、クリティカルケアにおける看護実践への有用性を検討するために、実際のケースにACTce-CCMを活用するケーススタディを実施した。 研究目的は、ACTce-CCMのクリティカルケアにおける看護実践への有用性を検討することである。事例は、慢性骨髄性白血病による抗がん剤治療中に腎障害の進行から尿毒症を発症した80代男性。透析を拒否したことで終末期医療に移行しようとしていた。分析方法は、事例の情報をACTce-CCMの情報整理枠組み(病態と治療、QOLとQOD、患者の意思、家族の心理社会的状況、医療チームの状況、周囲の状況の6つ)に記入し、項目毎のアセスメントを統合して全体像を捉えたうえで倫理問題リストを抽出し、目標、介入計画を検討した。 その結果、情報整理と分析により、「患者が治療を拒否する背景には、医療者を信頼できないという認識があったこと」、「信頼関係がない中で患者の本心が確認できないこと」や「長期予後が見込めるにも関わらず透析導入を拒否することに医療者がジレンマを感じていること」などが明らかになった。そこで介入目標を患者と医療者が信頼関係を構築し、両者が納得できる方針決定ができることとし、患者の価値観や思い、QODについて確認することや医療者が患者との信頼関係を構築できる関わりを行うことなどの介入計画を立案し、実践した。 このケースには、病状や治療拒否の意向から方針を決定しようとしたことで倫理的問題が生じていたが、ACTce-CCMを用いることで多角的な視点から全体像を捉え問題を明確化することができた。ACTce-CCMは、倫理問題を明確にするための情報整理にとどまらず、問題解決のための目標や介入まで看護過程の思考に沿ったツールであるため、看護実践への活用に有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って、ケーススタディによるACTce-CCMの有用性を検証できた。これまでの一連の研究成果と共にツールの完成版作成への具体的工程も明確になった。ただし、他の事例への適応が必要なため、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ACTce-CCMを完成させ、これによる紙上での事例分析による妥当性の検証を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の拡大により、予定していた複数の学会への参加ができなくなったため。複数の事例への適応による有用性検討のための費用を翌年度分の助成金に合わせて使用する計画である。
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