2019年度は、これまでに収集したデータ分析を網羅的に行った。これまでに日本語のブログへの書き込み頻度において確認された想起効果を、英語のWikipediaへのアクセス数でも確認した。2019年度はサンプル数を増やして網羅的に分析することで、現象の普遍性への考察を行った。具体的には、サンプルとして、映画に出現経験のあり、何らかの理由で亡くなった俳優名を扱ったことから、全体のサンプル数はN=689となった。俳優に対する訃報のニュースが入ると、その俳優名が想起され、Wikipediaにおいて亡くなった俳優自身のページへのアクセス数が増加することはよく知られている。しかし、そこから亡くなった俳優と共演経験のある俳優のページへのアクセス数まで共起して増加することは、よく知られていない。そこで、出演した映画を媒介とした俳優ネットワークを構築し、訃報のあった俳優のページへのアクセス数と、その俳優とつながりのある俳優のページへのアクセス数を比較するなど、新たな視点からの分析を行った。 特に2019年の8月から11月には、本研究テーマとデータを携えて修士課程の指導学生がアメリカ合衆国のビンガムトン大学に滞在した。現地では、ビンガムトン大学の佐山教授との議論や、学生自身がセミナーも行い、好評を得た。佐山教授はネットワーク科学に精通していることから、アメリカ滞在中には、想起現象のトリガーとなる訃報の外部入力が、俳優の共演ネットワークをどう伝わっていくのか、という問題に対して佐山教授らと議論しながら進めることができた。最終的には、学生がこれらの成果を修士論文にまとめ、学位も取得することができた。現在は、その内容を国際雑誌に投稿するべく論文執筆中である。
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