研究課題/領域番号 |
17K12841
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
望月 翔太 新潟大学, 自然科学系, 助教 (90737777)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 野生動物管理 / 人口減少 / 農地景観 / リスク評価 / 集落アンケート / 土地利用 / GIS / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、里山環境の利用・管理の縮小に伴う農地景観の変化や集落住民の意識が野生動物の生息地利用に与える影響を解明し、農作物被害のリスク評価をもとに、今後の土地利用計画や集落ごとの獣害対策を考案するための研究を実施する事である。平成29年度の実施状況として、ニホンザルとイノシシにおいて、複数の市町村を対象に集落アンケートを実施した。ニホンザルでは、被害対策における集落住民の意識や集落機能に着目して、どのような条件の集落で被害対策の効果が生じるかを明らかにした。特に、追い払い事業と電気柵事業において、効果を実感しやすい集落条件を機械学習を用いて評価した。その結果、両被害対策の効果が実感しやすい条件がわかった。GISを用いて、条件が揃った集落をマッピングする事により、対策の未実施集落において、効果を得やすい対策メニューを提示する事ができた。イノシシでは、平成19年度からの時系列データを収集し、被害と電気柵設置に関する関係性を明らかにした。その結果、電気柵によって集落の被害は確実に低減できる事がわかった。さらに、電気柵の効果は8年程度持続することもわかった。一方で、単独集落で電気柵を設置すると、その翌年に被害が周辺の集落に広がる傾向にある事が明らかになった。ニホンザルとイノシシの取組に関しては、今後の集落ぐるみの被害対策に対し、具体的、かつ効果的な実施方法を提案する事が可能であった。次年度は、これらの取組を継続し、被害対策の効果検証について整理していく。また、ニホンザルとイノシシ由来の被害を中心に、獣害リスクを考慮した集落単位の土地管理についてまとめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニホンザルとイノシシ由来の農作物被害に対して、集落を最小単位とした被害の要因分析を実施した。どちらの種においても、複数地域での評価が可能であった。ニホンザルに関しては、被害と集落の状況に関するアンケートを実施して、集落状況のGISデータベースを構築する事ができた。イノシシにおいても、被害状況や捕獲状況、電気柵実施状況に関する集落単位のGISデータベースを構築する事ができた。 ニホンザルに関しては、データベースから、追い払いと電気柵に関して、効果を実感しやすい集落状況について取りまとめることができた。両者が成功する条件は異なり、集落ごとに追い払いを実施するべき集落と電気柵を実施するべき集落のマッピングが可能となった。 イノシシに関しては、経年的な被害の変動に対して、集落ごとの電気柵の効果について明らかにした。電気柵を実施する事によって、集落の被害が低減する事を明らかにし、さらに、その効果がおよそ8年持続することもわかった。一方、8年を過ぎる事により、被害が増加する集落もあった。 ニホンザル、イノシシともに、データベースの構築と解析、可視化は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ニホンザルについては、集落アンケートの回答結果について、効果の実感という観点から評価したが、実際に被害対策で効果を挙げている集落とそうでない集落のヒアリングを実施し、両者の違いなどをケーススタディとして評価する。 イノシシについては、過去10年分の被害状況について、電気柵の効果だけでなく、捕獲圧に関しても評価項目に加えて、被害の変動に関して、いくつかのパラメータからベイズ推定を実施する。そこから、電気柵の対費用効果について評価する。 また、野生動物の農作物被害と、分布や捕獲、目撃情報との関係を、今後の人口減少社会における農地景観の変化や集落機能の変化という観点から、いくつかのシナリオ分析を実施する。特に、ニホンザルを対象にした集落アンケートでは、様々な観点からの質問項目があるため、獣害という観点だけでなく、集落の維持という観点からも分析して、今後の農村デザインについて考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、集落環境のGISデータ化のために空中写真や衛星画像を使用する予定であった。しかし、研究を進める中で、適切な時期のデータがない事や、データ解像度の問題から、ドローンによる空撮画像によって、集落環境のGIS化を実施した。ドローンだと、適切な時期に撮影が可能であるが、1回あたりの空撮に限度がある。そのため、平成29年度の調査では、研究対象となる地域全域をカバーすることが出来なかった。そのため、次年度使用額については、空撮用の調査費用として使用する。
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