里山環境の利用・管理の縮小に伴う農地景観の変化や、集落住民の意識が野生動物の生息地利用に与える影響を解明し、農作物被害のリスク評価をもとに、今後の土地利用計画や集落ごとの獣害対策を考案するための研究を実施した。 対象は、ニホンザルとイノシシで、集落ごとにアンケートを実施し、集落の維持における住民の意識調査を実施した。被害対策における集落住民の意識や集落機能に着目して、どのような条件の集落で被害対策の効果が生じるかを明らかにした。ニホンザルの被害対策では、追い払い事業と電気柵事業において、効果を実感しやすい集落条件を機械学習で評価した。その結果、集落の維持活動や行政との連携事業の個数など、集落における住民の意識によって、電気柵設置や追い払いなど、効果の出る対策が異なることを示した。GISを用いて、条件が揃った集落をマッピングする事により、対策の未実施集落において、効果を得やすい対策メニューを提示する事ができた。イノシシの被害対策では、電気柵によって集落の被害は確実に低減できる事がわかった。一方で、単独集落で電気柵を設置すると、その翌年に被害が周辺の集落に広がる傾向にある事が明らかになった。また、電気柵の設置や有害個体の捕獲だけでは、被害は低減しない事がわかった。電気柵を設置した地域で捕獲しなければ、有害個体を駆除できない事が推察された。研究実施期間の2年間では、顕著な農地景観の変化を捉える事は出来なかったが、地籍情報を活用する事で、今後、農地がどのように衰退していくかシミュレーションする事が可能だった。 集落単位で獣害のアンケート調査を実施する事により、集落ごとの課題を整理し、どのような対策メニューや研修メニューを導入するか判断する事ができた。GISを用いて成果を可視化する事で、被害が深刻な地域を身近に感じる事ができ、被害が発生していない地域への啓蒙活動も可能となった。
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