研究課題/領域番号 |
17K13151
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
深見 将志 日本大学, 商学部, 助教 (40784666)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スポーツ心理学 / HMD / VR |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display:以下,HMD)を用いたバーチャルリアリティ技術に基づいたメンタルトレーニングプログラムの開発である。初年度では,大学生アルペンスキー競技選手13名(男性7名,女性6名)を対象にスキー競技会の映像をHMDより視聴させ,視聴時の心理・生理的な反応について基礎的検討を行った。本実験で使用した映像は,デジタルビデオカメラ(GoPro HERO3)により撮影された国内アルペンスキー選手権大会時の滑走映像であった。映像はHMD(SONY製 HMZ-T3W)により視聴させた。視聴時の生じた各反応については,心理指標として二次元気分尺度(Two-Dimensional Mood Scale:TDMS)を用いて心理(気分)状態を検討し,生理指標として指尖脈波(脈拍間隔)を導出し,Lorentz plot法を用いた交感神経機能の検討を行った。本研究の結果,映像の視聴による生理的な反応は示されなかった。しかし,心理的な反応として映像の視聴前後に比べて映像視聴時はイライラして緊張した気分状態や興奮して活発な気分状態を増強させていた。これらのことから,大学生アルペンスキー選手は,バーチャルリアリティ映像の視聴により緊張状態へと気分が変容していた可能性が示された。本結果は日本スキー学会第28回大会にて報告した。 他方,競技経験の有無による心理・生理的な反応について検討するため,大学生アルペンスキー競技選手1名(男性)とスキー競技経験のない大学生1名(男性)を対象とした検討を行った。その結果,競技経験の有無に関わらず,バーチャルリアリティ映像の視聴により,副交感神経機能の抑制が認めらた。さらに,大学生アルペンスキー競技選手の特徴的な反応として,高い緊張状態へと気分状態が変容した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験対象者が冬季種目競技者であったことから,実験を12月以降に実施することとなった。しかしながら,第1実験であるHMDを用いたバーチャルリアリティが実験参加者の心理指標と生理指標に与える影響に関する検討については,実験参加者をはじめ,関連団体の協力もあり日本スキー学会にて研究発表を行うことができた。また,第2実験であるVR技術に基づいたメンタルトレーニングの介入実験については,現在までに実験を実施し,結果について検討を行っている。他方,第3実験についても,実験参加者の内諾をとっている。これらのことから,本研究における進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,4つの検証実験から構成されている。2017年度は,上記の通り第1実験と第2実験の実施および学会にて研究発表を行った。2018年度以降の研究計画については以下の通り示す。 第3実験:第2実験で用いたVR技術に基づいたメンタルトレーニングプログラムの1カ月間の介入実験を行い,その効果について検討を行う。 第4実験:国内主要大会においてVR技術に基づいたメンタルトレーニングの実践的な効果を検証する。具体的には,本研究の実験対象者の中から国内の主要な大会に出場する選手数名を対象に,ウェアラブルハートレートモニターを用いた競技大会中の心電図R-R間隔を測定する。得られたデータは,心拍変動スペクトル解析を行ない,試合時における自律神経系活動から効果を検証する。 本研究により得られた研究成果については,論文化や国内外の学会にて研究発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では,現在も継続的に競技活動を行っている大学生アスリートを実験の対象としている。実験参加者へは,「実験への協力によって競技活動に支障を来す場合は実験の参加を辞退できる」ことを事前に説明している。今回の実験においては,競技活動に専念するという理由から実験参加を辞退した学生が若干名いた。そのため,実験時に使用予定であった消耗品の購入が不要となり,差引額が生じた。2018年度に予定されている実験においては,消耗品を購入するため生じた差引額はこれらの購入に当てられる。
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