パーキンソン病の発症機序のひとつに、酸化ストレスによるドパミン作動性神経細胞死がある。しかし、その機序は不明であり、神経細胞死そのものを改善する治療薬もない。本研究では、酸化ストレスレベルに応じて、酸化価数を変化させるパーキンソン病原因因子DJ-1に着目し、DJ-1がどのように酸化ストレスレベルを感知し、神経細胞内反応を制御するのか解明することは、パーキンソン病の発症機序解明に繋がると考えた。実験の要となる、DJ-1酸化価数の制御においては、恒常的還元型DJ-1変異体を新たに設計、作成し、単独でのタンパク質結晶化を行った。その結果、結晶中のCys106が酸化されず、チオールとして存在することを確認した。DJ-1Cys106は溶液中でも容易に酸化されるため、恒常的還元型変異体を新たに作成できたことは、還元型DJ-1と酸化型DJ-1の機能を明確に分けるツールとなり、酸化価数の判定を容易にすることを可能とした。DJ-1価数の変化による相互作用因子解析には、p53タンパク質を用い、ゲル濾過クロマトグラフィー、表面プラズモン共鳴装置にて、恒常的酸化型DJ-1、恒常的還元型DJ-1との相互作用変化を解析した。その結果、補因子存在下で、恒常的酸化型DJ-1とp53の結合親和性が増加し、ゲル濾過クロマトグラフィーでは、溶出画分位置が変化した。さらに、恒常的酸化型DJ-1、恒常的還元型DJ-1を用いた免疫沈降実験により、還元型、酸化型特異的結合因子の探索を試みた。今後は、結合因子の解析を進め、発症機序との関与をさらに検討したい。
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