昨年度に引き続き、岩手県湯田町(現西和賀町)を拠点とする劇団ぶどう座の1950年代から60年代の劇作品に関する調査を進めた。2016年に劇団ぶどう座劇団員の遺族から提供のあった史料の収集・整理を主に行った。1950年代から60年代にかけてのぶどう座の活動は、全国的に展開したサークル文化運動に影響を受けているため、国立国会図書館にて雑誌『国民文化』などのサークル文化運動に関する資料収集を行った。 また、銀河ホールが創設された1993年以降のぶどう座の活動について引き続き調査を行った。2018年8月には劇団ぶどう座による『植物医師』上演の稽古を見学し、稽古後、劇団員へのヒアリングを行った。同月、西和賀町立銀河ホールで開催された学生演劇合宿事業におけるワークショップに参加し、西和賀町における演劇実践の実態についても調査した。 現在、研究期間における史料収集・整理により、530点の図書目録の作業が終了している。史料は演劇関係の図書雑誌に加え、農村運動や婦人運動、岩手県の郷土資料なども含んでいる。劇団ぶどう座の未刊行作品である川村光夫の『町長選挙』『どぶろく農民の墓』については活字化し、再活用しやすい状態にした。これらの史料整理により、1950年代から60年代の文化運動のあり方の中で、ぶどう座の活動を俯瞰できる可能性が高まった。目録化された資料については、劇団員と十分にコンタクトをとったうえで研究期間終了後に公表する予定である。 また、2018年11月には演出家・立教大学講師の羽鳥嘉郎氏を福岡女学院大学に招き、羽鳥氏編集による『集まると使える-80年代運動の中の演劇と演劇の中の運動』の中の、特にぶどう座を扱った点について話をうかがった。ぶどう座は近年「演劇」と「運動」の関わりを考える上でも注目されており、ぶどう座の今日的な意義について有益な見解を得ることができた。
|