研究課題/領域番号 |
17K13429
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
金沢 友緒 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 講師 (20785828)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 啓蒙 / ロシア / 気球 / エカチェリーナ2世 / フランス / ドイツ |
研究実績の概要 |
本研究は、近代ロシア社会の形成過程にみる、ヨーロッパ文化受容を明らかにする作業の一環である。18世紀末に、ヨーロッパ世界を中心に衝撃を与えたフランスのモンゴルフィエ兄弟による熱気球実験の成功は、ロシアにおいても大きな反響を呼んだ。しかしロシアの場合、気球は科学の進歩としてだけでなく、先進国としてのフランス文化の影響と役割について再考する契機になったのである。 本研究はこの気球による飛行実験が成功した1783年を起点に、ロシアの作家や政府の要人達の反応を考察するものであり、初年度以降、気球誕生直後からロシアで気球実験が禁止されるまでの期間、及び禁令施行後の時期の作家達の作品を中心に資料調査と考察を行ってきた。また、昨年度は実験禁止令そのものがロシアに与えた影響を考察すべく、18世紀末から19世紀にかけての書籍・雑誌を中心に「飛行」及び鳥の「飛翔」の主題を含んだ作品に関する情報を収集した。 今年度は昨年度の作業を踏まえた上で、ロシア国外の知識人の「気球」や「飛行」のテーマに対する反応に調査の対象を移す予定であったが、昨年度までの作業過程で完結しなかったエカチェリーナ2世の文章について追加で調査する必要が出てきたため、女帝の書簡、特にフランスに滞在していた外交官F.M.グリムに宛てた書簡に見られる気球に関する記述を考察することとなった。この作業と並行して、同時代のロシアの作家・詩人達の文学作品や論文の考察・分析も行い、当時の知的エリート層の文章にあらわれた啓蒙家としての資質を理解することを試みた。研究の成果の一部については、日本18世紀ロシア研究会、日本独文学会での発表等に反映させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究が遅れた主な理由として、以下の3つを挙げておく理由が挙げられる: ・研究において、ロシアにおける気球実験禁止令の施行前後の作家の作品について追加調査をする必要が出てきた。 ・2020年1月から大学に着任したため、年度の途中での所属機関異動となった。異動手続きや準備とともに、新たな研究環境を整え、慣れるまでに一定の時間を要した。 ・新型コロナウイルス感染の拡大を受けて、年度末の出張や図書館利用について制限せざるをえなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度については、今年度着手には至らなかった、ヨーロッパの知識人達の間に見る気球及び飛翔に対する反応を、彼等の作品の考察を通して把握し、ロシア国内における作家達の反応の考察をそれらとの比較の中でより広い視点から捉え直すことを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
・2020年1月から大学に着任したため、年度の途中での所属機関異動となった。異動手続き及び着任の準備とともに、新たな研究環境を整え、慣れるまでに一定の時間を要し、具体的な研究作業にまでは至らなかった。 ・新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、年度末の国外での研究調査や図書館等の研究機関利用、書籍購入等、研究に必要な作業全般について自粛することとなった。
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