研究課題/領域番号 |
17K13442
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大塚 行誠 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (90612937)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 記述言語学 / チン語支 / クキ・チン系 |
研究実績の概要 |
日本国内では,前年度ミゾラム州アイゾール県におけるボム語話者コミュニティーの協力を得て実施した基礎語彙調査の整理と分析を行った。また,ボム語に関する先行文献もいくつか収集できたことで今後のボム語の記述的研究に一層のはずみをつけることができた。 国外のフィールドワークは2018年8月から9月にかけての1か月間と2019年の2月と3月に行った。ミャンマーとバングラデシュに渡航し,記述言語学的なインタビューを実施することができた。特に,ミャンマーでは基礎語彙リストの確認のほか,ミャンマー国内におけるボム語話者の社会的状況,ボム語における方言差,基本的な文法事項に関する調査などについて,ビルマ語を媒介言語として詳しく聞き取り調査をすることができた。 2018年9月に京都で開催された第51回国際シナ・チベット言語学会においてボム語と同系統にあたるチン語支の言語,アショー・チン語の動詞複合体に関する口頭発表を行い,国外のチン語支諸言語を調査する研究者と議論ができた。2019年3月には東京で開かれた国際ワークショップ International Workshop Directional Prefix in Tibeto-Burman Languagesに参加し,ボム語と同系統にあたるティディム・チン語において見られる来辞と去辞に関する報告をジンポー語の研究者と共同で行っている。さらに,日本国内では『言語文化研究』においてボム語と同系統のラルテー語における動詞語幹の交替と題した調査ノートを公開した。上記のような形で調査研究の結果をまとめ,成果として報告も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メイン・インフォーマントを決めることができたことから,昨年に比べ,聞き取り調査と調査結果の分析のスピードを上げることができた。教務により,現地における調査が当初計画していた期間より短くなってしまった点については昨年と変わりないが,メイン・インフォーマントの献身的な協力もあり,短い期間でも基本的な言語分析に足る十分な言語データを得ることができた。ボム語データの公表や研究発表に向け,現在準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の調査で,インド,バングラデシュ,ミャンマーの三ヶ国各々に住んでいるボム語話者とから聞き取り調査を行い,本格的な文法調査も開始することができたほか,具体的な方言差についてもある程度把握することができた。今後は,インド側とミャンマー側のボム語話者に焦点を絞り,さらなるフィールドワークを行いながら,基礎語彙リストの公開,文法スケッチの執筆,国際的なデジタル・アーカイブにも提供できるような言語資料の収集に努める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度と同様,教務および現地のインフォーマントの都合もあり,当初想定していた調査期間よりも短くなったため,次年度使用額が生じた。しかし,今後も国外調査を継続していくため旅費が必要なほか,研究に必要な物品費,謝礼や英文校正などで使用する予定である。
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