研究課題/領域番号 |
17K13442
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大塚 行誠 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (90612937)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 記述言語学 |
研究実績の概要 |
2019年度からはミャンマーでの本格的なボム語の調査を開始していた。しかし、2020年の春から続く新型コロナウイルスによる渡航規制、さらにはその翌年のミャンマーの政情不安が原因で現地への渡航は不可能となり、現地の調査協力者であるボム語母語話者との連絡および調査も難航していた。そのため、2021年度はインド側での調査も新型コロナウイルスの感染拡大と現地の情勢により実現せず、国内での調査研究を余儀なくされた。 そこで、2021年度は在日ミャンマー人(在日チン民族)からの協力を得て、ボム語と同じクキ・チン語支中央チン語群に属するハカ・チン語およびファラム・チン語の調査をオンラインで行い、主に中央チン語群に関連する文献を参考にしながら各言語の音韻と基本的な文法構造を調べた。後のボム語およびその他のクキ・チン諸語との対照研究のために現在基礎語彙と基本文例のデータベースを作っている。さらに、中央チン語群の言語調査のほか、ティディム・チン語(北部チン語群)やアショー・チン語(南部チン語群)など、他の語群に属する言語のデータの整理と分析も進めている。その成果として、ティディム・チン語の方向接辞、アショー・チン語におけるビルマ語の借用語に関する論文2点を発表している。 2021年度中にボム語のオンライン調査を再開することは社会情勢上できなかったが、今後の海外渡航再開の可能性も見据えつつ、言語調査の計画を立てているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度以降続く新型コロナウイルスと2021年度以降のミャンマー国内の政情不安のため、当初計画していたフィールドワークは全て実施することができなかった。日本国内での限られた調査研究しか行えなかったため、2021年度については進捗状況が遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度末時点も現在も新型コロナウイルス感染は収束しているといえず、感染拡大に対する社会的規制や海外渡航の制限が続いており、ミャンマーおよびインドへの渡航が難しい状況は変わらず続いている。さらに2019年度からミャンマー西部に住むボム語話者がメインインフォーマントとして調査に協力してくれているのだが、ミャンマー国内の政情不安により、生活の不安定な状況が続いている。インターネットによるオンライン調査も現地の状況を見ると定期的に実施するのは難しい状況にある。このような状況が改善され、以前のように自由に現地調査が行えるようになり次第、すぐに現地調査を再開したいと考えている。 国内では、ボム語と近い系統にあるクキ・チン系の言語(ハカ・チン語やファラム・チン語など)にも焦点を当てながら調査を続けていきたいと考えている。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、インドやミャンマーでのフィールドワークのほか、国内の出張も実施できなかったため昨年度は再延長せざるを得なかった。今後は旅行等が不可能な場合、関連文献の購入費やボム語と近い系統にある言語の調査で発生する謝金、データ入力や翻訳の費用にあてる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度中に新型コロナウイルス感染が収束しなかった上、感染拡大に対する社会的規制や海外渡航の制限が続いている。そのため、ミャンマーおよびインドへの渡航が困難な状況が続いており、研究計画の中で中心となっているフィールドワークのための旅費が年度内に使用できなかったため。
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