研究課題/領域番号 |
17K13468
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研究機関 | 志學館大学 |
研究代表者 |
平塚 雄亮 志學館大学, 人間関係学部, 講師 (70757822)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 方言 / テキスト / 辞書 |
研究実績の概要 |
甑島里方言の記述の一環として,「甑島里方言の形容詞連用形」(『西日本国語国文学』4に収録)を執筆した。これにより,2015年に刊行した『甑島里方言記述文法書』には欠けていた形容詞連用形に関する記述を補うことができた。本研究課題では里方言のテキストと辞書を作成することを目標としているが,それは最終的には里方言の総合的な記述を完成させるためのものであり,今後も継続してこういった文法記述も並行して行っていく予定である。 里方言の辞書作成に関しては,2017年8月にフィールドワークを行った。名詞・動詞の基礎語彙を中心に調査し,400語超の単語および例文を採集することができた。このデータは辞書作成ソフトのLexique Proに入力し,その作業をほぼ終えている。このフィールドワークに加え,次年度以降の調査のために,話者によって編まれた辞書にも目を通し,今後どういった項目を重点的に調査すべきかの検討も行った。 里方言のテキスト作成に関しては,過去に研究代表者が中心となって収録した録音資料の整理を行った。すでにテキスト化が済んでいるものもあるが,聞き取りや表記が不正確な箇所も多かったため,音声を聞きなおし,これを修正する作業を行った。また,鹿児島県立図書館所蔵の「方言ライブラリー」に収録されている里方言のテキストにも目を通し,これを研究者が使えるようなテキストに表記等を改める作業にも着手した。この作業を通じて,これまで通時的な研究が行えなかった里方言において,言語変化研究が行えるようになるという効果が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
辞書作成に関して,申請時の予定では初年度に1,200語を得る予定であったが,フィールドワークが1度しか実施できなかったことが影響し,約3分の1の400語程度しか収集することができなかった。これについては話者の手による既存の辞書類を生かすなどし,次年度以降さらに効率的に単語を収集できるよう最優先する。
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今後の研究の推進方策 |
辞書作成については,琉球語の方言辞書を作成している原田走一郎氏(長崎大学)と共同で研究会を数回行い,あるべき方言辞書の姿について議論を深めていく予定である。また,なかなか研究業績としては認知されづらい辞書をいかに成果物として高めていくかについても意見を交わすことにしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年10月にハワイで行われた国際会議で口頭発表を行う予定であったが,不採択となり旅費の支出が少なくなってしまったため。2018年度は辞書作成に関する研究会を数回開催する予定であり,次年度使用額はこの旅費に充当する予定である。
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