研究課題
本研究の目的は,日本人英語学習者が「コンテクストの中で使える語彙知識」を習得するのに求められる学習量と質(言語インプットの量と質)を,言語統計解析モデルの一つである潜在意味解析により推定することにある。特に中学・高等学校で使用される英語検定教科書等をインプットとした場合の語彙知識の発達過程をシミュレートすることで,英語語彙学習・指導に求められるインプット環境の最適化を図る。具体的には,潜在意味解析によりインプットに基づく単語の知識モデルを構築し,日本人英語学習者の語彙習得過程との比較シミュレーションを行う予定でいる。研究開始年度である平成29年度は,日本人英語学習者が使用する英語検定教科書等をビッグデータとし,潜在意味解析による知識モデルの構築を行うためのコーパス編纂を一部実施した。検定教科書を中心に既刊の英語教科書(中学校:6社6種18冊・高等学校:12社26種72冊)を収集し,電子化した言語データを語句・文書行列に変換しているところである。この作業と並行する形で,英語語彙指導の効果を数量化するための研究デザインについて日本国内の研究報告を系統的にレビューした。『全国英語教育学会紀要』に掲載されている398本の量的研究論文を,研究デザインや指導効果の推定に用いたテストの特性にしたがってメタ分析を行った結果,全体の59%が指導効果を推定するのに不適切な研究デザインを用いていることが分かった。同様に測定の妥当性が保証されていないテストを使用している研究は指導効果を過大評価する傾向にあることを示した。教育調査研究では統制群を設けたり理想的なテストを実施したりすることに限界があるものの,適切なデータ解析による結果の解釈を行うことの必要性を提案した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の1年目は,日本人英語学習者が受ける主な言語インプット・ソースである英語検定教科書を利用して,言語知識モデルを構築するためのコーパスを作成することが目的であった。これに対し,研究計画通り中学・高等学校で使用されている英語検定教科書の電子化を実施し,データ解析のためのコーパス編纂を行っているところである。また,副次的に行われた研究成果については学会での口頭発表ならびに論文として内容が公開された。
今後は2年目の研究計画および発展的課題に着手する。具体的には,母語獲得を対象としたLandauer et al. (2011) を参考に,中学1年生から高校3年生までの知識モデルを,潜在意味解析を利用して構築する。得られた成果については学会や論文投稿という形で発表し,外部機関による客観的な評価を確認しながら研究を進めていく。
本研究課題の遂行に必要な書籍(潜在意味解析による知識モデルの構築に必要なコーパス作成に利用する多読読本)について納入業者との見積もりの折り合いがつかず,当初より購入予定であった複数の書籍を購入できなかったために次年度使用額が生じている。次年度は見積もりを複数の業者に依頼することで,今年度購入予定だった書籍を選定する計画でいる。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
JACET Journal
巻: 62 ページ: 109-128
ARELE: annual review of English language education in Japan
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https://researchmap.jp/HamadaAkira/
https://sites.google.com/site/298hamada/