研究課題
本研究の目的は,日本人英語学習者が「コンテクストの中で使える語彙知識」を習得するのに求められる学習量と質(言語インプットの量と質)を,言語統計解析モデルの一つである潜在意味解析により推定することにある。特に中学・高等学校で使用される英語検定教科書等をインプットとした場合の語彙知識の発達過程をシミュレートすることで,英語語彙学習・指導に求められるインプット環境の最適化を図る。具体的には,潜在意味解析によりインプットに基づく単語の知識モデルを構築し,日本人英語学習者の語彙習得過程との比較シミュレーションを行う。平成30年度は,日本人英語学習者が使用する英語検定教科書等をビッグデータとし,潜在意味解析による知識モデルの構築を行った。検定教科書を中心に既刊の英語教科書から潜在意味空間を構築し,英検1級から5級までの語彙空所補充問題における「基幹部」と「選択肢」の意味的類似度を算出した。結果,インプット量の少ない低学年の知識モデルは基幹部と正答選択肢の意味的類似度を適切に捉えられなかったのに対し,学年が上がるにつれて正確な判断ができるようになることが分かった。この作業と並行する形で,コーパスや自然言語処理の技術を外国語学習に応用するデータ駆動型学習の効果検証を行った。具体的には,タスク型のプロセス・ライティングにデータ駆動型学習を取り入れることで,チャンクの境界を認識できるようになる,動詞の使い方の誤りが減る,語順の誤りが減ることをアクションリサーチの枠組みで明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
研究計画2年目の目標であった,英語検定教科書から構築した言語知識モデルが語彙知識の発達過程を捉えられるかについての試行調査を行うことができた。また,副次的に行われた研究成果については学会での口頭発表ならびに論文として内容が公開された。
今後は3年目の研究計画および発展的課題に着手する。具体的には,実験研究を通して,最適化されたインプット環境における語彙指導の効果を検証する。実験研究では,知識モデルが推定した最適な質を持つインプットを最適量与えた実験群と統制群の語彙学習の成果を比較する。得られた成果については学会や論文投稿という形で発表し,外部機関による客観的な評価を確認しながら研究を進めていく。
大規模データ解析のために必要なワークステーションの購入を検討していたが必要スペックと見積りとの間に差があり当該年度での購入を見送ったため次年度使用額が生じている。引き続き業者とのやり取りを経て予算内でワークステーションを購入する計画でいる。
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