研究課題/領域番号 |
17K13591
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
東 聖子 近畿大学, 国際学部, 講師 (00735102)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 移民 / パンジャーブ / 文化実践 / 越境 |
研究実績の概要 |
カナダ、アメリカ合衆国、パキスタンでの調査を実施した。カナダにおいては、宗教や民族コミュニティ、親族ネットワークを介して、ナショナル、宗教、民族などさまざまなアイデンティティの重なりを、移民1世や2世が経験しながら移民社会を形成していることがわかった。同時に、パンジャーブ移民はホスト社会や他の移民コミュニティとも繋がりをもち、そこには、さまざまな次元のモビリティが作用していることが見えてきた。具体的には、個人が経験する社会的地位の移動、日常生活における物理的な移動、出身地と移住先間のトランスナショナル/トランスローカルな空間での移動、である。 上述の内容は、インド側パンジャーブ出身者、パキスタン側パンジャーブ出身者双方に見られた。また、この両者間の交流もさまざまな場面で見られ、想定していたようなパンジャーブという文化的基盤が両者に通底して見られた。しかしながら、この両国を跨ぐパンジャーブという文化的基盤の共有よりも、ナショナルアイデンティティや宗教アイデンティティに基づくコミュニティやネットワークが、移民の日常生活に大きく影響していることが確認された。出身国や宗教の枠組みとそれに基づくコミュニティやネットワークが、組織的な影響を移民社会に与えている。けれども、個人レベルにおける越境的なパンジャーブという文化的基盤共有の経験が、ナショナル及び宗教アイデンティティに拘泥した閉鎖的な移民社会にならないために、重要な役割を果たしうることも見えてきた。個人によるパンジャーブ文化共有の経験とその実践が、移民社会やホスト社会にどのような影響を与えるのか、明らかになってきた。両国出身者の間に見られた文化共有経験は、移住先ローカルにおける日常のプライベート空間でおもに見られたが、その個人の経験や実践がどのように社会に波及し得るのか、調査結果報告としてまとめたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大による各国の規制により、2020年2月~3月に予定していた調査が実施できなかった。その間、電話やメールでのやり取りを続けることで、話を聞いたりすることはできたが、内容が限定的とならざるを得なかった。というのも、調査対象者も同様の影響を受け、一時期国中に足止めとなり、現在の居住地に戻れない状態が現在も続いているためである。調査者と調査対象者の双方で、当初予定していた計画が進められず、かつ物理的移動が制限された硬直的な状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
物理的移動制限が続くなか、このまま調査地訪問ができない可能性を鑑み、これまでの調査結果を再検討及び整理する。可能な限り電話やメール等を介した調査を実施し、これまでの調査結果とつなげて、成果報告としての論文を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、予定していた海外調査の実施が叶わなかった。今後調査地への渡航が可能になれば調査を実施するが、状況が変わらず、海外調査実施が困難な場合には、繰越等検討する。
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