移民の特徴は出身国のそれと同一視され、確定的なものとして語られることが多く、移民自身も出身国に基づくアイデンティティを意識する機会は少なくない。しかしながら、移住先での経験や出身地との往来等によって、出身国を自明の単位とする特徴づけやアイデンティティは、捉え直され、更新されうることを、カナダのパンジャーブ移民への調査をとおして示した。インド亜大陸北西部パンジャーブ地方からの移民の出身国はインドとパキスタンで異なるが、文化・社会的背景を共有するため、移住先において近しい関係になる。かれらのカナダ社会における経験には、国民国家の枠に囚われない文化実践のあり方が存在することが明らかとなった。
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