研究実績の概要 |
イギリスにおける代位のメカニズムを明らかにするため、近時、著しい変化を遂げつつある、不当利得法(law of unjust enrichment)の研究を進めた。具体的には、イギリス不当利得法上の画期的な業績と目されるGoff /Jones の著書”The Law of Restitution”の精読・研究、および貴族院判決であるLipkin Gorman v. Karpnale Ltd事件(1991 年)を中心に検討して、イギリスの一般不当利得法について検討した。 また、イギリス法の「代位」の起源についてはあまりはっきりとしておらず、ローマ法の影響については争われていることを確認した。すなわち、代位は純粋にイギリスの理論であると考え、ローマ法からの継受を否定する論者もあるが、ローマ法の継受を肯定する者もあることを確認した。イギリス法については、重要な学術文献等の収集を行い、これらの精読・検討を行った。 同じ英米法圏であるアメリカ合衆国などの代位制度についても研究を進め、Dixon, Sheldon, Harris などの文献を精読した。 日本法については、最判昭和59年5月29日民集38巻7号885頁などの諸判例を中心におよび通説が求償と代位の関係を明らかにしている。かかる判例法理の詳細を検討し、併せてこれまでの有力学説の検討を行った。 また、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)における弁済者代位規定の検討および改正に至るまでの各種議論について検討を行った。
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