本課題は、戦前において外交官、戦後に政界入りし、社会党右派・民社党の中心人物の一人となった曽祢益の伝記研究を行ったものである。その外交論の変遷を中心的主題として、時系列順に、特に以下の点についての解明を試みた。戦前の外務省内の路線対立における曽祢の位置、占領期とりわけ片山政権期における曽祢の役割、講和論争における右派外交論の実像、左右社会党統一の際の外交政策の策定、安保闘争と初期民社党の外交路線の策定過程、民社党内の諸勢力の競合と外交路線の対立、などである。本課題はとりわけ、戦後革新勢力の外交政策の戦前との連続性の解明や、先行研究の薄い革新勢力右派の外交論の検証という点で重要性を持つ。
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