公共事業において安全性や耐久性などの工事品質が確保されることは重要であり、手抜き工事を防ぐための様々な方策が検討されてきた。特に、調達入札における落札額は工事品質に大きな影響を与えるものと考えられており、落札額の低落を防ぐことによって工事品質を維持しようとする施策がとられてきた。しかし、入札金額の選択と工事品質の選択は独立の意思決定である可能性もあり、そのような場合には、落札額の低落を防ぐことによって品質を維持しようとする試みの効果は限定される。 そこで本研究は、入札における落札額が工事品質に与える影響を実証分析によって明らかにすることを試みた。具体的には、地方自治体の発注する工事の入札データと工事成績評定点をマッチングさせ、さまざまな要因をコントロールした上で両者の間の関係を分析した。その結果、本研究のデータでは落札額と工事品質の間の関係は確認されず、入札行動と工事品質の選択は独立であるという可能性が示唆された。
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