研究課題/領域番号 |
17K13824
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
山下 知晃 福井県立大学, 経済学部, 助教 (50754553)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 業績悪化 / 会計上の損失 / 財務会計の契約支援機能 / エージェンシー理論 / 経営者交代 |
研究実績の概要 |
本研究は,会計上の業績悪化(損失計上)と経営者交代の関係を明らかにすることを目的としたものである。平成29年度の研究実施計画は次のとおりであった。(1)①本研究課題と関連する先行研究についてサーベイを行い,②本研究課題にふさわしい理論的枠組みの構築や③仮説の明確化,そして,④仮説を検証するためのリサーチ・デザインを決定する。(2)本研究に用いるデータ・ベースとして,①経営者交代の有無および新任経営者の特徴に関するデータ・ベース,および②企業が業績悪化に陥った原因に関するデータ・ベースの作成を行う。 以上の研究目的と研究実施計画にしたがって,平成29年度は最初に先行研究のサーベイを行った。ただし,対象は経営者交代だけに限定せず,関連する経営者報酬契約に関する先行研究も対象とした。続いて,先行研究のサーベイをもとに,具体的な検討課題と作業仮説を設定し,仮説を検証するためのリサーチ・デザインを行った。なお,分析に必要なデータ・ベース構築に際し,製造業で日経500構成銘柄に含まれる企業を対象として日経NEEDSと有価証券報告書(開示ネットより閲覧)から必要なデータを収集した。損失の類型化は,設定した仮説にしたがって特別損失項目に注目して行うこととした。 当初の計画より早く分析を実施できたため,得られた結果についてはセミナーや研究会で報告を行い,他の研究者や実務経験者からいただいた助言や批判をふまえて,一旦,論文(未公表)としてまとめた。しかしながら,他の研究者からの批判点として,(1)分析結果が仮説と整合的ではなく,仮説自体を練り直す必要があること,(2)その際に,理論的な研究(契約理論)を踏まえた仮説構築を行う必要があること,そして(3)サンプルにバイアスがあるため,より広範なデータの収集の必要があることが指摘された。現在はこれらの批判を踏まえて研究を改善してるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は研究実施計画にもとづいて,先行研究のサーベイと(限られた範囲ではあるものの)分析に必要なデータの収集を実施することができた。さらに,研究実施計画よりも早く研究を進めることができたこともあり,平成29年度中に研究成果についてセミナーや研究会で報告し,他の研究者や実務経験者との意見交換を行った。 しかしながら,【研究成果の概要】で述べた通り,仮説の展開やデータ収集の方法について他の研究者から改善の必要性について指摘されたため,それらの改善点について見直しを行う必要が生じた(この点については【今後の研究の推進方策】でも述べる)。 以上,平成29年度の研究実施状況を踏まえて,現在の進捗状況を【おおむね順調に進展している】と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた平成30年度以降の研究実施計画は次の通りである。(1)業績悪化企業の経営者交代に関する再検証の実施,および,(2)会計上の業績悪化の原因を踏まえた,業績と経営者交代の関連性に関する分析の実施。平成30年度以降も研究実施計画に沿って研究を進めていく予定である。 ただし,上述の通り,平成29年度はおおむね順調に研究を進めることができたものの,当該年度中に受けた指摘(研究実績の概要にまとめた3点)については早急に(平成30年度中に)改善を行う必要がある。とりわけ「理論的な研究を踏まえた仮説構築」に関しては,平成29年度に応用ミクロ経済学を研究する研究者から助言をもらうなど改善の方向性について現在,模索中である(サンプルについては,上場企業全体を対象にデータの収集を行うことで改善を予定している)。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した理由は次の通りである。分析に必要となるデータ作成のために有価証券報告書を閲覧する必要があり,そのためのデータ・ベースの契約を,科学研究費申請時より予定していた。実際に研究年度開始した後,当初,契約を予定していた会社のものとは異なるデータ・ベースを利用することとなり,データ・ベースの契約に係る支出額が予定額よりも少なくなった。これが次年度使用額が発生した大きな理由である。また,国内旅費として学会参加費を計上していたものの,当該旅費を所属機関からの研究費から支出することとなり,当初の予定よりも旅費の金額が小さくなったことも理由のひとつである。 次年度使用額については,研究成果の発表や公表に関する費用(旅費や英文校閲費など)または文献複写費に充当する予定である。
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