2020年度は、2019年度までの研究活動を踏まえて、対象地域での補足調査を行いながら①災害文化の形成・継承・変質過程に影響を与える要素を抽出し類型化を行い、②災害文化の形成・継承・変質過程において、災害文化が地域防災や災害対応・復旧・復興・生活再建に与える影響について検討を加える予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響でフィールドワークに大きな制限がかかる状況であったため、予定を大幅に変更し、密にならない屋外での行事について数回の参与観察を行ったほか、資料調査・新聞分析を中心に行った。①については、当初の仮説が検証できる可能性が高いという感触を得た。②については、災害文化が地域防災や災害対応・復旧・復興・生活再建に影響を与えるだけではなく,当該地域や他地域の地域防災や災害対応・復旧・復興・生活再建が災害文化に影響を与える事例も見出すことができた。以上のように、資料調査では、これまでの調査に加えて①②についての内容を深めることができたが、現地でしか閲覧できない資料もあることから、今後の調査で研究内容をさらに深化させる必要が生じた。そのため、これらについては、次年度以降の研究成果公開を目指している。 2020年度の研究成果の一部は、日本災害復興学会と日本自然災害学会にて口頭発表を行った。これらは、過去の災害の経験がどのように活かされているかということを検証するためのひとつの過程として行ったものである。日本災害復興学会では新聞分析の手法を用いて北海道胆振東部地震被災地の復興報道について扱った。日本自然災害学会では胆振東部地震の義援金を中心に取り上げた。その他、研修会や機関誌等への寄稿の中で、過去の災害と胆振東部地震被災地の状況について取り扱い、社会への発信を試みた。
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