本研究は、「施印」の作成・流通・意義を解明することを通して、従来、商業出版が提供する「有料」の「知」に依拠してきた教育史研究に、「もう一つ」の「知の伝達」システムの存在を明らかにした。情報が「有料」か「無料」のどちらで伝達されるかによって、その情報の質・量・流通・受容がどう変わるのかについて、今後の研究が無視のできない問題となったのである。これはアカデミアに対する問題提起であると同時に、インターネットの普及によって情報の「無料化」が急速に進み、学校や大学の「知」の独占が崩壊しつつある現在社会にも、今後の教育の在り方を考えるための不可避の視座である。
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