研究課題/領域番号 |
17K14055
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
福井 駿 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 講師 (40758687)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 哲学教育 / 小学校カリキュラム改革 / シティズンシップ教育 |
研究実績の概要 |
本研究は,「新しい哲学教育」の導入によって小学校カリキュラムを学習者の自ら考える力を育成するものへと改革する理論を解明することを目的としている。そのための事例として,米国ハワイ州の小学校を想定していたが,日本のお茶の水女子大学附属小学校(以下,お茶小とする)が学校設定教科「てつがく」の導入とその吟味を学校全体で推進していることに注目し,こちらを主な事例とすることにした。 本年度実施した主なことは,次の3つである。①「てつがく」に関する関連資料の収集・分析。お茶小が毎年行っている授業研究公開の資料を2000年前後のものから最新のものまで,約20年分収集し,「てつがく」が導入された基本的な意図を分析した。②「てつがく」及びそれと関連の見られる教科の実践観察。「てつがく」「みがく」「社会科」の授業実践を観察し,研究代表者と協力者で協議しながら,その教授-学習の意味を分析した。③「てつがく」の導入と小学校カリキュラムの変革に関する小学校教員へのインタビュー。「てつがく」の導入,その背景となっているシティズンシップ教育に関わりの深い教員3名へのインタビューを実施し,「てつがく」が導入された意図に加えて,その文脈,起こっている変化について分析した。 これらのことによって,以下のようなことを解明した。お茶小では,市民に必要とされる普遍的なリテラシーを集中的に育成できるカリキュラム領域として「てつがく」をつくり,その領域とのつながりで各教科でできることを更に追求するという変革を行っていること。「てつがく」の機能は,社会資本の形成と思考の継続を学校カリキュラム内で関連づけることにあり,それによって,理性にもとづいた民主主義社会の場への参加意識を高めるようになっていた。この研究成果は,全国社会科教育学会の研究大会で口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に主な調査対象とする事例を変更したが,目的に対する進捗としては計画通りである。2年次は「新しい哲学教育」を導入した特定の事例(本研究の視点からそのように見なせると判断した事例)における学校カリキュラム全体に起こる変化を記述していくこと,を計画していた。これを,文献調査・観察調査・インタビュー調査を手段として進めることができた。また,事例のより豊富なデータ収集と解釈のための人的なネットワークを向上することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
3年次は,大きく2点を実施する。①これまでの成果の論文化。現在,2年次までの成果についての論文を執筆中であり,それを継続する。②調査の継続。文献調査・観察調査・インタビュー調査を手段として,「てつがく」が学校カリキュラム全体とどのような関係にあるかをより詳細に明らかにしていく。特に「てつがく」と密接に結びついていることがわかった,お茶小における低学年教育に関わりの深い教員へのインビュー調査を実施していきたい。
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