研究課題/領域番号 |
17K14064
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
楠 敬太 大阪大学, キャンパスライフ健康支援センター, 特任研究員(常勤) (70770296)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マルチメディアDAISY図書 / 高等教育機関 / 大規模アンケート |
研究実績の概要 |
マルチメディアDAISY図書を利用している児童生徒の教員向けにアンケートを実施した.金森他(2010),金森他(2011)はマルチメディアDAISY図書の実践研究を学習障害のある児童生徒だけではなく,肢体不自由,視覚障害,知的障害等の児童生徒に対しても実践している.今回の調査でも多くの障害種に対して実践を行っていることが明らかになった.中村(2007)は知的障害について,若澤他(2010)は自閉症スペクトラムについて,動機づけの促進は難しいと述べているが,知的障害・自閉症スペクトラムに関する「読むことへの抵抗感,苦手感,嫌悪感が減った,読むことを嫌だと言わなくなった」が有意に多いことから,マルチメディアDAISY図書は,動機づけを向上させるために有効なツールだと推測できた. また,マルチメディアDAISY図書を利用して,半年未満の児童生徒でも,「文節の区切りが上手になった」,「読みがスムーズになった」,「読むスピードが適度なスピードになった」,「自己肯定感や自尊感情が増した」が向上したという結果となった.このことからマルチメディアDAISY図書の効果は,即時的であるということが予測できた. さらに,使用頻度を見ていくと,週1回の活用やテストの前のみだけでは,マルチメディアDAISY図書の効果は現れないということが明らかになった.週2以上使用することで,読みの正確性・流暢性だけではなく,読みへの抵抗感等にも影響があることが分かった. 以上のアンケートだけではなく,学童期よりマルチメディアDAISY図書を活用している高校生・大学生に1名ずつ,聞き取り調査を行った.小学校時代は,マルチメディアDAISY図書を活用できたが,中学校では導入が難しいということを聞き取れた.また,高校は私立高校のため,環境が整備されており,個別の配慮がなくても対応できているということを確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模アンケートを実施でき,その内容をまとめることができた.今後はさらに,詳細に分析していく.また,聞き取り調査も,実施が進めることができており,おおむね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,マルチメディアDAISY図書活用経験のある読みに困難のある成人の対象数を増やし,インタビューによるライフヒストリー調査を行う.そして,マルチメディアDAISY図書に関連する学習環境や入試制度等の社会制度について考究し,マルチメディアDAISY図書の有効性を発揮していく社会的条件について検討していく. また.アメリカのモンタナ州の高等学校や大学(モンタナ大学)にてフィールド調査を実施し,今までの実践研究を国際的な比較研究に基づき,今後の課題や展望等を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究をまとめる上で,海外の大学でマルチメディアDAISY図書を活用しているデータを収集する必要が出てきた。その ため,アメリカのモンタナ大学に視察に行く予定を立てている。先方との都合上,当該年度での視察が難しく,次年度 に視察に行く予定となった。そのため,延長を希望している。
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